2013年7月13日土曜日

海外事業環境:駐在員の生活

+水谷穣 

ここの所少し硬い話題が続いたので、ロンドン駐在時代の経験を踏まえて、駐在員の生活状況をお伝えします。一部最近の情報も付記しました。



1.家賃事情


89年にロンドン駐在を始めた時はNorth Woodというロンドン北西部の郊外にフラットを借りて生活していました。以前もブログに書きましたが、私の場合給与がグロス支給だったため、ロンドンの家賃が高い事には閉口していました。当時は2部屋以上の物件がほとんどで月額700-800ポンドが最低ラインだったと記憶しています。

日本人学校のあるWest Actonに日本企業の駐在員が多く住んでいました。Semi Detachedという2軒が組み合わさった家が駐在員には人気で、月額1,400ポンドがこのエリアでの相場だったと記憶してます。

当時は、インターネットなどという物が無くコミュニティー誌の広告や地元の不動産屋さんが頼りでした。日本の不動産屋もありますが、地元の不動産屋と比べると、若干高めだったと記憶しています。

家内が車の運転が出来ないため、ロンドン市内に引っ越しをしました。この時に日本人向けコミュニティー誌に広告を出していた日本人エージェントにお願いしたのですが、その物件がカウンシルフラット(低所得者用に地方自治体が安く提供するフラット)のまた貸しだった事が後々判明し、Residential Parking Permitを取得できない、当時導入された直後だったPollTaxを払っていないなどのトラブルに見舞われた苦い経験があります。

このようなトラブルに嫌気がさしたので、引っ越しを考えたのですが市内だと家賃は高かった一方で購入価格は日本の感覚からすると安く、ローンの返済額が家賃より安価でした。自腹で払っていた事と、当時はイギリスに骨をうずめるつもりだったので、フラット購入を決意しました。イギリスの不動産屋さんを通してフラットを購入し、帰国時に売却した経験からは、(担当者によるのかもしれませんが)非常にレベルの高いサービスを提供してもらいました。

現状の価格をネットで調べてみると、North Woodの同じような物件で月額£1,200-1,500West ActonSemi Detachedで月額£2,600程度の様です。20年以上も前の話なので当たり前かもしれませんが、随分値上がりしているようです。

ネットで調べていて、非常にショックなことに近辺の現状取引額が売却当時の3倍にもなっていました。帰国が決まった時は、そのまま賃貸に出す事を考えていたのですが、英語で不動産手続きなど私には到底無理だという家内の強固な主張(私に万が一のことがあった時)で、泣く泣く売却をしたのですが今持っていれば一財産になっていたはずです。

教訓:海外資産の運用に関しては女性の意見を聞いてはいけません。


2.Residential Parking Permit


日本では馴染みのないシステムなので、簡単に紹介します。検索してみるとアメリカにも同様なシステムがある様です。内容はというと、地方行政区に一定の金額を収めると許可証が発行され、指定された路上に駐車できる仕掛けです。

私の場合Royal Borough of Kensington and Chelseaという行政区に住んでいましたが、この域内の指定区画であればどこでも駐車が可能なのです。買い物などの時にも使えるので非常に便利でした。駐在当時の金額は年間£70程度でした。現在の金額は車種により変動がありますが£150程度の様です。これも随分値上がりしていますね。

ひじょうに便利なシステムなのですが、リスクもあります。指定区画は公道なので、下水道、各種ケーブルなどの保守、単純に道路保守など様々な理由で道路工事が行われます。前もって工事をする旨の通達が2-3日前に表示されるルールになっています。一度1週間の出張の際、戻ってきたら止めたはずの場所に車が見当たらず盗難にあったのかとびっくり仰天したことがありました。道路も復旧されていたのですぐには分からなかったのですが、警察に通報したところ、出張中に道路工事があり、区内の駐車場に保管されいることが分かり事なきを得ました。


3.医療


外国に居住していると一番心配なのが、医療だと思います。一応ビジネスを英語でできますが、やはり症状などの説明をしたり聞いたりするのはハードルが高かったです。

イギリスの場合、NHS(NationalHealth Service)というものがあります。GP(General Practitioner)という掛りつけ医を通し必要に応じ専門医を紹介してもらいます。まずはGPに登録が必要なのですが、当時は情報もほとんどなく心細いおもいをしました。近所の人に評判などを聞いて決めた記憶があります。こちらも参照下さい。→http://www.petite.co.jp/iNHS.htm

現在はNHS ChoiceというWebサービスがあります。レーティングなども載っているのでかなり選びやすいのではないでしょうか。隔世の感があります。

専門医になかなか持てもらえないなど様々な課題がありますが、子供の医療費は無料です。出産もNHSを選択すると無料で出来ます。娘の出産はNHSで行ないましたが、病院の選択が出来ず(指定される)第二次大戦の映画に出てきそうな、レンガ造りの体育館のような建物でプライバシーもほとんどなく、家内は相当つらい目にあったようでこの話題は我が家ではタブーです。

歯医者も私が滞在当時は、登録制でしたが現在はこの制度は廃止されているそうです。数回診療を受けましたが、手先の器用さは無いものの、非常に丁寧な対応をしてくれました。ハードウェアに関しては、日本の病院の方が進んでいますが、医師を含めた医療スタッフの対応はイギリスの方が「サービス提供」をしている印象が非常に強いです。

その後会社で医療保険に加入したこともあり、日本人のいるクリニックに通っていました。駐在員の生活環境維持という観点からは医療保険加入を検討してみては如何でしょうか。


4.買い物


イギリス大手チェーンの看板
ロンドンでは、日本の食材を含め買い物で苦労したことはありませんでした。ただ、他のヨーロッパ諸国に駐在されている方の話を聞くと、ロンドンが特殊なようです。実際他のヨーロッパ諸国からのロンドンへの出張時には、日本食材を買い出しに行くということをよく耳にしました。

幾つかの小売チェーンがあります。90年代中ごろには、日本食ブームもあり、醤油などの一部食材に関しては英国のスーパーマーケットでも購入することが出来ました。

食料品に関してはネットで検索する限り私の駐在時代とあまり変動が無いように思われます。89年当時は日曜日は休み、土曜日も昼で閉店。平日も18時位には閉店してしまっていました。法律が改正されてからは日本並みの開店時間の様で、ここにも隔世の感があります。

日本食料品店は市内にいくつかあります。食料品に関しては、ほとんど買えないものは無いと思って間違いありません。


5.ゴルフ事情


駐在当初は、誘われても断っていたのですが95年ころからゴルフに嵌りました。市内からでも30分程度の所に幾つもゴルフ場があり、かつ値段も非常に安くできます。

ゴルフ場によっては、年会員メンバーというのがあり当時で£700払えば何ラウンドでもし放題でした。現在は£980だそうです。他のものに比べると値上がり度合いが緩やかですね。

このほかにも、日本と同じような会員権メンバーシップもありますが、メンバーになればグリーンフィーは無料というのが海外のゴルフ場の一般的なスキームの様です。