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2015年6月16日火曜日

IoT時代にグローバルで儲ける 第二回 儲けるとは?(2)

儲けるとは?(1)では、自己資本の増強を可能な限り早い時間で達成することが「儲ける」の定義としてました。そのためには、単年度のフリーキャッシュフロー(FCF)を増加させるだけではなく、中長期的に収益を増加させるための適切な「投資」も必要だということに触れました。

今回は、FCFを値x時間軸の面積で極大化するための施策の全体像に触れ、その方向性を提示するための分析を行います。


施策の全体像


図1 FCF面積極大化施策全体像
中長期でFCFを極大化するには、前述の営業利益率向上、資産の活用に加えて、収益成長性を担保する施策を実施する必要があります。

日本企業は、自らが努力することによって効果が出る原価や費用を削減することは得意としてきました。
しかし、過去に隆盛を誇りながら衰退していった繊維、家電、電気などの業界動向を見ていると、その原価を低減できることの優位性を背景に値引き競争を仕掛けることで自ら製品価値を下げ、自ら首を絞めていった構図が見受けられます。


この悪循環を断ち切り収益成長性を確保するために必要な施策は、「顧客の納品満足度体験の向上 → 目的:自社ブランドへのロイヤルティーを高め優良顧客を増加させる」ことと「製品・サービスの革新 → 目的:製品の機能ではなく、顧客が求める「価値」を提供する」ことが必要になってきます。


また、海外のオペレーションにおいて、生産性向上活動が日本と同じレベルで実現できているかということも検証が必要になると考えられます。


結論の一部を先に述べてしまいましたが、財務データの分析からこの方向性で良いのか検証してみます。


日本企業の収益構造



グラフ1 日本企業の収益構造タイプ
グラフ1は、一部上場製造業の単体及び連結業績をグラフ化したものです。縦軸が売上総利益率、横軸が売上販管費比率の逆数(企業生産性)になっています。(2014年3月期にもっとも近い財務諸表を基に作成)

売上総利益率が高くて、企業生産性が(相対的に)低い企業群を高付加価値型、逆に売上総利益率が低く、企業生産性が高い企業群を高生産性型と呼んでいますが、右上象限に位置する両方の軸が良い企業は残念ながら、存在していません。

グラフ2 日本企業とAppleの比較
日本企業は、ある意味きれいに収益タイプが分かれているので、右上象限に行くことはどうしてもできないことなのか?という疑問が生じたため、1社だけですが、外国企業(Apple)を同じグラフにプロットしてみると、右上象限に位置しています。

という事は、高付加価値を追求しながら、高生産性を追求することは決して不可能ではないという事になります。





さらに、多くの企業は連結では若干自社単体に比して付加価値が高く、生産性が低い傾向がみられます。

日本企業の国内収益依存


グラフ3 日本企業の海外収益依存度
グラフ3は、縦軸に日本単体の利益が連結利益に占めている割合、横軸に日本での売上が連結売り上げに占める比率をプロットしたグラフです。、海外売上高比率より海外での利益率が高い(海外収益依存)場合、右上象限にプロットされます。

日本企業17社中6社が右上象限にプロットされていますが、赤字の企業は日本単体営業利益率が3%以下であることが理由で右上象限にプロットされているため、健全な姿とは言えません。

進むべき方向性

以上の分析を踏まえると、収益成長性を確保するためには、上述の2つの施策に加え、海外の生産性向上を実行していく必要があると考えられます。従って、方向性としては次の3つになります。



  1. 顧客の納品満足度体験の向上
  2. 製品・サービスの革新
  3. 海外オペレーションの生産性向上

次回からは、それぞれのテーマの内容をもう少し具体化して議論したいと思います。



2015年5月22日金曜日

IoT時代にグローバルで儲ける 第一回 儲けるとは?(1)

前回の投稿から2年近くたってしまいました。
2015年3月に一般社団法人 グローバル教育研究所の勉強会で「グローバルで儲ける」というタイトルで講演をしました。

非常に好評だったので、Internet of Things(モノのインターネット)、Industry4.0などの最近の動きも付け加えた内容にしたものをシリーズでお届けしたいと思います。

目次

»儲けるとは?

»IoT時代にグローバルで儲けるために

˃分析
˃方向性
˃オムニチャネル
˃グローバルプロダクトマネージャーの設置
˃在庫最適化
˃パイプライン可視化、営業力強化
˃人財モデル
˃ITサービスの活用


儲けるとは?



まず、基本的に儲けるということの定義をします。異論もあると思いますが、今回のシリーズでの定義はここに記したものとさせて下さい。

ここでの定義は、自己資本が増加することを「儲かる」としています。

このためには単年度のP/L上の収益を増やすだけではなく、収益を源泉としたフリーキャッシュフロー(FCF)を増やす必要があります。(図:自己資本の増減とFCの環形 参照)

また、「儲かる」状態を続けていくためには、対象期間でのFCFの総和を極大化させることが重要になります。(図 自己資本増強にはFCF面積極大化が必要参照)

その為には時間軸を取り入れた概念であれる、FCFVMG(Velocity Made Good:方向性と速度を要素としたベクトル)を最大化することが必要になります。

次に、FCFに影響を与える財務的なドライバーが何かを見てみましょう。




この図にあるように、短期的にFCFを良くするためには、設備投資やR&Dへの資本投下を減らすことが手っ取り早い方法だということが分かります。

直感的にご理解いただけると思いますが、これでは長期的に「儲ける」ということにはつながりません。環境変化の激しい現代では、新しい製品及びサービスへの投資をしなければあっという間にビジネスがジリ貧になっていくのは目に見えています。


次回は、長期的に「儲ける」ための施策全体像を提示します。また、日本企業の実態を分析し、より具体的な施策に落とし込むための方向性を提示したいと思います。


2013年5月31日金曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(2)


現在ビジネスの世界では、海外事業を推進するグローバル人材が比較的関心の高い話題だと思います。様々な人が様々な事を言っているのが現状ですが、日本の有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものを感じていました。そんなとき、Newsweek日本版のインタビュー記事「アップルの内側から見た「超国家コミュニティー」」を読み、この中で語られている人々の行動特性が、まさに有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものだと感じたという主旨の記事を先日投稿しました。

これはどちらが正しいと言う事ではなくて、企業が置かれているまたは目指している状況によって必要な人材のコンピテンシーが違うことからきていると私は考えました。そこで、今回の投稿では、企業のグローバル化の段階で、人材に求められるコンピテンシーが変化するのかを検証してみます。

コンピテンシーの定義


なぜ海外事業の段階によってコンピテンシーが変化するのか。それは、コンピテンシーは下の図にあるように定義されるものだからです。定義の際のポイントは、業務を遂行する際に想定される困難な状況を設定し、この困難な状況に対応するために必要な行動特性を定義する所にあります。

コンピテンシー定義ステップ(例) 法人営業
コンピテンシー定義ステップ:Minoriソリューションズ 就活エンパワーから転載




これによって、ただ単純に活動内容をこなすだけではなく、成果を出す際には非常に重要になる困難状況での対応行動がとれる人材の定義が出来るようになります。

従って、企業活動の内容が変化すると必要なコンピテンシーも変化する可能性があることから、各企業の海外事業の段階によってグローバル人材に求められるコンピテンシーも変化するのではないか。これが、立場によってグローバル人材の定義が変わる理由ではないかと想定した理由です。

海外事業の段階


グローバル人材及びグローバル化の段階についての研究は1980年代後半から日本でも行われてきている。海外進出段階の分類にもいくつかバリエーションがあるが、花田が1988年に発表した5段階説*1)が代表的なものである。その後の企業グローバル化を扱った実務書に大きな影響を与えていると言う事なので、これを基に必要なコンピテンシーを洗い出しました。

日本企業の多くがこの段階のいずれかにいると考えられる①輸出中心段階~③国際化段階についてのみ掲載します。このほかには④多国籍段階、⑤グローバル化段階があります。

 
グローバル化の段階と必要なコンピテンシー
グローバル化の段階と必要なコンピテンシー 出所:日本企業のグローバル化再考1)グローバル化への4つのハードル 柳川 太一。活動内容以下は筆者追記。

レベル感に違いはあるが、海外事業の段階によって違いはない


こうやって洗いだしてみるとグローバル人材には、
1) そもそもビジネスを推進していくことに関わるコンピテンシーが必要なこと。
2) 多くの日本企業の場合、ビジネス推進に必要な仕掛けを用意せずに海外進出することが多いため、仕掛けを自ら構築する事に関わるコンピテンシーが必要なこと。
3) 上記2点に加え、外部とのかかわりのほとんどが進出先の人々になることから異文化、気候、違う制度、などCAGE差異への対応能力が特に必要なことが分かります。

少なくとも③段階までは、必要なレベルの違いはありながらも、項目として必要なコンピテンシーは大きく違いが無い事が明確になりました。④、⑤段階においても、人事制度を変えていく必要性はありますが、コンピテンシーとしての項目に違いは無いと思います。どうやら、海外事業の段階によって必要なコンピテンシーは違うのではないか、という仮説は誤りの様です。

今回のコンピテンシー分析は、組み立て系製造業を想定しています。業種によっては、内容が異なってくる可能性もあるので自社独自の分析をすることをお勧めします。

事業を成功させるには、その環境に適した人材を投入することが非常に重要になると思います。もし、最適な人材が社内にいなくても、必要なコンピテンシーが明確になっていれば、仕掛けや補完手段を準備するなどの対応が可能になります。

コンピテンシーを明確にすることで、「未知の世界に飛び込める行動力」、「 最後までやり抜くタフネスさ」、「   自分の頭で考え、課題を解決する能力」といった能力重視で選んだ人材が、進出先の人々と全くコミュニケーションを取れず事業が失敗しかつ他の場所では能力を発揮できたであろう貴重な人材を失うようなリスクを冒すことも避けられると思います。

是非、自社独自の分析をしてみてください。

*1) 花田光世(1988)「グローバル戦略を支える人事システム(下)」『ダイヤモンド ハーバードビジネスレビュー』

(2013年6月3日:一部加筆修正して再掲します)

2013年5月23日木曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(1)

+水谷穣


最近取り組み始めた活動の一つに、コンピテンシーベース就活支援があります。コンピテンシーモデルは、ここ数年大手企業を中心に活用が進んでいる人材活用モデルです。これを新卒の採用にも取り入れる企業が出てきており、その背景は次のようなものだと言うことです。

1) 新卒採用の離職率が30%近くなっている
2) 大手企業では、地頭が良い≒偏差値の高い大学から採用した学生を何年かかけて育ててから戦力としていたのですが、リストラの影響で余剰人員が現場におらず、即戦力が求められる傾向が強くなっている。

コンピテンシーは高業績者の行動特性などと訳されます。企業側でこのモデルを採用基準にしている場合、東大理系院生の学校推薦であっても返品率が高くなってきたことへの対応方法論(東大で生まれた究極のエントリーシート )をベースに構築されたものが、コンピテンシーベース就活支援です。サービス名:就活エンパワーズ

某大手総合商社などで企業向けのコンピテンシーモデル導入支援を行っていた方を中心に、クラウドサービスと講義の組み合わせでサービスを提供しています。

グローバル人材はホットな課題

グローバル人材検索トレンド
グローバル人材検索トレンド

Googleの検索トレンドによると投稿執筆時点での検索インタレスト*)48と2012年9月のピークに比べて約半分ですが、それでも月間検索数は14,800ありそこそこ検索されています。また、企業向け研修をビジネスとしている方々からも非常に人気のテーマだと聞きます。アベノミクス成長戦略のキーワードの一つ海外展開を支えるという意味でも比較的ホットな話題です。

グローバル人材の定義


実際に検索を掛けてみると、色々なエントリーがヒットしますが典型的な論旨がまとめられているのは出口治明さんが書かれているこちらではないでしょうか。厚生労働省の雇用政策研究会がヒアリングした結果の取り纏めたそうです。


“1.   未知の世界に飛び込める行動力
2.   最後までやり抜くタフネスさ
3.   自分の頭で考え、課題を解決する能力“

これって、「グローバルな人材」に求められる資質というよりは、環境変化が激しい今の日本で求められる人材像の基本的なコンピテンシーではないかと私は思ってしまいます。

海外赴任に積極的ならグローバル人材?


+

“「海外赴任を敬遠する人」
・若手・中堅クラスでは増えているとする企業が25.6%と1/4を占める一方、減っているとする企業も22.0%と2割超で、増えている企業と減っている企業が拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が20.7%であるのに対して、一方、減っている企業は10.9%。
「海外赴任を自ら希望する人」
・若手・中堅では、増えているとする企業、減っているとする企業、いずれも25.0%で拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が7.6%、減っているとする企業が21.3%。“
ということなので、海外赴任してくれる人の像が厚労省の調査でまとめられている像に近いのではないでしょうか。数多い海外拠点をちゃんと運営する、あるいはどうしても海外進出が必要な企業にとっては、海外赴任に積極的な人材は非常にありがたいので、大事な行動特性だと思います。

でも、グローバル人材の定義が海外拠点に於いて高業績を上げる人であるならば、その行動特性には別の要素もあるはずと思っていました。

本当のグローバル人材のコンピテンシーは?


そんな時にNewsweek日本版になるほどと思うエントリーがありました。

このサブタイトルにあるように、海外で仕事をする場合には自分の常識が通用しないことが大前提になります。常識の差はいくら説明しても、どうしても埋まらないものです。であるならば、このような環境の中で高業績を達成し続けられるには、「常識の差を説明しなくても済むような仕事の仕方が必要になる」これができることがグローバル人材の行動特性=コンピテンシーの一つです。

このインタビュー記事の最後に次の文章があります。
“日本社会は同質性が強過ぎるがゆえに、少しの差がすごく大きな違いに感じられるところがあると思う。超国家コミュニティーは、そこにイラン人もフランス人もインド人もいる世界。瑣末なことに執拗にこだわり続けるというのはあまりない。“

これは、日本とアメリカのウェブコミュニティーの違いについての質問の流れからの発言なので、企業から見たグローバル人材のコンピテンシーとは関係なさそうです。しかし、CAGEの違いがあるなかでチームとしてのパフォーマンスを競合より出すためには、出された意見の欠点をあげつらうのではなく、良いところを評価してその上にさらに良いものを重ねていく行動をチーム全員がする必要があります。特に、リーダーはその行動特性が必要になります。これがダイバーシティー:diversityの本質であり、グローバルな環境で複数の国籍を持った人材で構成されたチームで高業績を出し続けるもう一つのコンピテンシーだと思います。

今回の投稿は、Newsweekの記事に触発されて書き始めました。企業のグローバル化度合いによっても、求めるグローバル人材像は違うと思われます。グローバル人材シリーズの次回は、この観点でまとめてみる予定です。

一部加筆して再掲しています。



*) チャートの最高点を基準として検索インタレストを表した場合の数値です。指定された地域と期間における検索の 10 % が「ピザ」で、この値が最大値であれば、この数値が 100 となります。これは絶対的な検索ボリュームを表しているわけではありません。

2013年4月19日金曜日

8000人以上のアジア人財へのアンケート結果に基づくアジアにおける企業の国別人気度調査から

先日お会いした方から、この調査内容を教えて頂きました。

東南アジア+インド8か国にインターネット求人サイトを運営するジョブストリートが行なった地域内のホワイトカラーに対して企業の人気を調査した結果を資料にまとめたものです。2008年、2010年に引き続き3回目とのことです。

海外進出を計画・実行されている企業にとって、人財をいかに確保するかは常について回る課題です。よく聞かれるなやみは、「すぐ辞める」「パフォーマンスが悪い」などですが、これ等の悩みを解決するうえで、非常に示唆に富んだ内容だと思うので、紹介します。

なお、こちらに掲載したグラフ、表はジョブストリート・アセアンビジネスコンサルティング株式会社 より頂いた資料を基に切り貼りし許可を得て掲載します。

調査の概要


2012年8月1日~15日にかけて、ジョブストリートに登録するマレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、インドのホワイトカラー及びキャリアインターナショナル社に登録する中国のホワイトカラーを対象に調査、回答した8,294人について集計。

アジアにおける企業の国別人気度調査の概要


どの国の企業で働きたいか


企業の国籍別人気度最も人気度が高かったのは、アメリカ企業。「是非とも働きたい」「機会があれば働きたい」を合わせて83.1%になっている。3位に地元企業が入り、日本企業は6位となっている。居住している国別のランキングでは、インドネシアを除きアメリカが全ての国でトップになっている。

インドネシアでは、地元企業が1位になっていることと、シンガポールでは日本を含めたアジアの国々は欧米、シンガポールより下位に位置づけられている。

この辺りは、国民性、教育事情が反映されているようです。


日本企業に対する居住国別人気度ランキング


日本企業にフォーカスしてみると、最も日本企業に対するイメージが良いのは、タイ。その後、フィリピン、インド、インドネシアが続いている。
居住国別日本企業人気度ランキング

私見ですが、マレーシアはLook East政策を以前取っていたのに加え、現在でも毎年数百人単位の日本への留学生がおり、比較的親日度は高いと思います。やはり製造業の生産拠点のプレゼンスが低下している影響があるのかもしれません。一方タイでのイメージが良いのは、タイそのものが自動車生産拠点としての地位を確保し、国産OEMがそれぞれ拠点を構えているのに加え、2nd、場合によっては3rd Tierが進出しているため、プレゼンスがそれなりにある事の影響と考えられます。


とくに印象に残った企業


ここからが、興味深い調査内容です。

実際に勤務してみて特に印象に残った企業の国籍を聞いてみたところ、日本企業は、アメリカ・地元に続き3位を占めている。地元企業、アメリカ企業勤務は数が多いため、これを勤務した者のうち印象に残ったとする者の割合を出すと日本企業はアメリカに次いで2位になり、その勤務者に強い印象を与えてるといえる。

持っている印象がどのようなものかへの回答は70数%の人が日本企業にポジティブな印象を持っている。

外国人にとって日本企業の印象例ただ、その内容を見てみると左図の内容になっている。

自由記述で数は多くないと思われますが、ネガティブな印象の中には左の図に示されるようにかなり辛辣なものが見受けられます。

一方アメリカ企業のポジティブな印象は、次のようになっている。

□ 成長の機会が与えられる
□ 給与・手当てが良い
□ 従業員に対するケア
□ ワークライフバランスが良い
□ 日本企業ほど厳密なルールが無く、フレキシブルである

記事からはアメリカ企業へのポジティブな印象がどの程度のボリュームなのか読み取れません。ただ、日本企業の現地法人社長の日本人比率がアジアにおいては80%を超えている事*1)、日本企業には「成長の機会が与えられる」というポジティブコメントが無い事がインターナショナル企業*2)から脱し切れていない状況が見て取れると思います。

多くの日系海外拠点外国籍スタッフと接してきた経験からいうと、これが優秀な外国籍スタッフが定着しにくい根本原因だと思います。投稿の最後でもう一度触れます。

*1) 社団法人 日本在外企業協会 「海外現地法人のグローバル経営化に関するアンケート調査」
*2) 三菱UFJリサーチ&コンサルティング 「グローバル人材マネジメントの現状と課題」

称賛に値するグローバル企業はどこか


自由記述をまとめた結果、上位30位(と記事にはありますが、トップ29?)の中に顔を出している日本企業は8位のトヨタと24位のソニー。1位から5位までの間にGoogle、Apple、Microsoft、IBMと4つも米国IT企業が名を連ねている。これは、ネットサーベイのためのバイアスが若干あると考えられる。

称賛される理由として、アメリカ企業と日本企業の差が表れているのが、アメリカは「優れたコーポレートブランディング」であるのが日本は「競争力のある製品とサービス」が1位になっている点だ。

記事には原因分析されていませんが、私の勝手な推測では日本企業はあくまでも「モノ創り」組織であり、アメリカ企業はビジネス組織だということの表れではないでしょうか。ここに、日本企業が取り組むべきポイントの2つ目があると感じました。

グローバル企業のマネージャーに求める資質


この項は、今回のサーベイで初めて行った調査だ。
グラフの中に記述されている10項目について、「非常に重要である」「重要である」「多少重要である」「関係ない」の4段階で評価してもらい、それぞれの項目で「非常に重要である」「重要である」を選んだ人の比率を表したものの回答者全員でみたものが下のグラフになる。
グローバル企業のマネージャーに求める資質

国別にみると、Integrityの重要性を軸に、4つのグループに分けられる。インドネシア・マレーシア・フィリッピン・シンガポールの4か国はいずれもIntegrityが1位、Competentが2位になっている。中国は独自のぱたーんを示し、Competentが1位となっています。インドは、CreativeとPerformance-consciousが上位を占めていますが、Integrity・Competent・Inspiring・Risk-takingが僅差で続いている。

タイは、Fair-mindedやForward-lookingが上位であり、Competentが重視されないなど、他国とは明らかに違う結果を示している。

この結果の日本企業への示唆を見るために、今回、日本企業で働きたい人・働きたくない人の別に、マネージャーに求める資質を集計してみたものが次のグラフになる。


日本企業で働きたい人・働きたくない人別マネージャーに求める資質

日本企業で働きたい人の方が高い数値を示しているのが、Integrity・Creativeであり、働きたくない人の方が高い数値を示しているのはCompetent・Inspiring・Caringである。勤労意欲とその人がマネージャーの資質に要求するものに関連があると仮定すると、前者は相対的に日本企業が持っている、後者は持っていない・かけていると認識されている可能性がある。


結論


冒頭で述べたとおり、これからの日本企業はアメリカ・ヨーロッパの多国籍企業および東南アジア・インドの優秀企業をベンチマークし、自らの働く場としての魅力を明確に定義し発信するエンプロイヤー・ブランディングに注力していく必要がある。

また本文では触れなかったが、MBA保持者の間ではインド企業の人気は高く、日本企業の人気は低い。優秀人材が注目する企業になっていくためには、さらにMBA保持者をもひきつけ、有効に活用できるような合理的な経営スタイルを導入することも重要であろう。


筆者情報

ジョブストリート・アジアンビジネスコンサルティング株式会社 代表取締役 菱垣 雄介
株式会社 ライトワークス グローバル人材サポート部 野口 昭彦
調査監修:早稲田大学ビジネススクール教授 大滝 令嗣

私見


途中「ですます」調と「である」調が混ざっていて読みにくかったかもしれません。「ですます」調は私のコメントです。

海外進出企業の人材に関しての悩みで良く聞くのは、次の2つです。

  • 人材が定着しない(特に優秀な人材)
  • スキルにミスマッチが生じることが多い
2番目の課題は1番目の課題を引き起こす要因とも捉えられるので、そういう観点で言うと課題は1つです。

グローバルキャリアパスの構築が重要


なぜ、優秀な人材が定着しないのか、皆さんはどう思われます?

多くの日本企業現地法人外国籍スタッフと話をした経験からいうと、「自分の将来に夢が持てないから」だと私は思います。特にMBAを取得しているような人たちから見ると、アメリカ・欧州企業は現地法人社長・重役のポジションだけでなく、リージョナル本社への登用、更にいうと本社または、他の地域での魅力的なポジションを得る機会が多くあります。日本企業にはそれが見えてこないのです。記事で言及しているエンプロイヤー・ブランディングを高めるためには、このようなキャリアパスを明確に設定する必要があると思います。

先の日本在外企業協会の調査結果を見ると、欧州・ロシアの外国籍社長比率は2010年で46%とあります。私がヨーロッパに駐在していた90年代は5%を切っていたことを考えると随分欧州では外国籍社長が増えています。しかし、在籍者全員に提示できるキャリアパスとそれを運営するための評価基準の整備は、この記事のサーベイ、日本在外企業協会の調査内容を見るとこれからだと思われます。

足元の制度整備から


グローバルキャリアパス構築・運用は、グループ全体で取り組む必要があり短期的な課題解決にはつながりません。であれば、現法レベルで直ぐにでも取り組める対応策が必要です。海外進出していて、Job Descriptionを用意していない企業は少ないと思います。無い場合は、至急作成する事をお勧めします。

Job Descriptionがあってもスキルミスマッチが発生している場合は、その中身の見直しが必要です。問題は、どの様に見直すかですが、スキルミスマッチが発生している原因を潰さないと意味がありません。

日本国内の場合、部門の責任範囲が代表的なものだけ明確になっていて、それ以外の仕事はスタッフの「自発的行為」によってカバーされていることが多々あります。外国人にはこれは通用しません。逆に言うと、日本人には「Job Descriptionに書かれていないからやらない」という外国籍スタッフは「言われた事しかやらない」という不満の対象にしかなりません。

このすれ違いを称してスキルミスマッチと言っているケースが多々見受けられます。以前の日本企業では終身雇用が保障されていたため、阿吽の呼吸で本来の役割でもないことをやることがひいては自分のメリットにもなっていました。海外ではその環境が無いのです。余談ですが、国内でも終身雇用は随分前に崩壊し、若手は外国人スタッフと同じような行動をとることが多くなっているのではないでしょうか。

では、どうするか?

大きく言うと2つのアプローチがあると思います。その一つは、Job Descriptionの詳細化です。部署間での抜け漏れが出ないような内容にするのですが、この際のコツは既存の部署の役割ではなく、現在の事業環境から本来あるべき機能を定義することです。全体像が定義出来たら、その内容を部署に割り当てます。こちらはいわば北風アプローチ。2~3ヶ月で実施できる短期施策です。

二つ目のアプローチは、南風アプローチでJob Descriptionが網羅的でなくても良い環境を作り上げることです。北風アプローチより、少し時間がかかりますが定着率を上げる効果は高いと思います。
ポイントだけお伝えすると、「なぜ」を伝えることです。「なぜ」この工程・業務は必要なのか、「なぜ」この品質が求められるのか等々。なぜとその背後にあるミッション≒責任を繰り返し伝えることで、「何を」が達成できない時には別の方法を取ってでも目的を達成することが出来るようになります。

いずれのアプローチにも、期間とキャリアパスの目標設定とその評価を行う評価制度を立ち上げ運用することでより制度の浸透を図ることが重要です。詳細は別の機会に投稿しますが、お急ぎの方は、こちらからお問い合わせください。 

今回は、8000人を超えるアジアホワイトカラーの調査を基にした記事をご紹介しました。ご意見、コメント頂けると嬉しいです。