2013年5月23日木曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(1)

+水谷穣


最近取り組み始めた活動の一つに、コンピテンシーベース就活支援があります。コンピテンシーモデルは、ここ数年大手企業を中心に活用が進んでいる人材活用モデルです。これを新卒の採用にも取り入れる企業が出てきており、その背景は次のようなものだと言うことです。

1) 新卒採用の離職率が30%近くなっている
2) 大手企業では、地頭が良い≒偏差値の高い大学から採用した学生を何年かかけて育ててから戦力としていたのですが、リストラの影響で余剰人員が現場におらず、即戦力が求められる傾向が強くなっている。

コンピテンシーは高業績者の行動特性などと訳されます。企業側でこのモデルを採用基準にしている場合、東大理系院生の学校推薦であっても返品率が高くなってきたことへの対応方法論(東大で生まれた究極のエントリーシート )をベースに構築されたものが、コンピテンシーベース就活支援です。サービス名:就活エンパワーズ

某大手総合商社などで企業向けのコンピテンシーモデル導入支援を行っていた方を中心に、クラウドサービスと講義の組み合わせでサービスを提供しています。

グローバル人材はホットな課題

グローバル人材検索トレンド
グローバル人材検索トレンド

Googleの検索トレンドによると投稿執筆時点での検索インタレスト*)4820129月のピークに比べて約半分ですが、それでも月間検索数は14,800ありそこそこ検索されています。また、企業向け研修をビジネスとしている方々からも非常に人気のテーマだと聞きます。アベノミクス成長戦略のキーワードの一つ海外展開を支えるという意味でも比較的ホットな話題です。

グローバル人材の定義


実際に検索を掛けてみると、色々なエントリーがヒットしますが典型的な論旨がまとめられているのは出口治明さんが書かれているこちらではないでしょうか。厚生労働省の雇用政策研究会がヒアリングした結果の取り纏めたそうです。


1.   未知の世界に飛び込める行動力
2.   最後までやり抜くタフネスさ
3.   自分の頭で考え、課題を解決する能力“

これって、「グローバルな人材」に求められる資質というよりは、環境変化が激しい今の日本で求められる人材像の基本的なコンピテンシーではないかと私は思ってしまいます。

海外赴任に積極的ならグローバル人材?


+

「海外赴任を敬遠する人」
・若手・中堅クラスでは増えているとする企業が25.6%1/4を占める一方、減っているとする企業も22.0%と2割超で、増えている企業と減っている企業が拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が20.7%であるのに対して、一方、減っている企業は10.9%
「海外赴任を自ら希望する人」
・若手・中堅では、増えているとする企業、減っているとする企業、いずれも25.0%で拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が7.6%、減っているとする企業が21.3%
ということなので、海外赴任してくれる人の像が厚労省の調査でまとめられている像に近いのではないでしょうか。数多い海外拠点をちゃんと運営する、あるいはどうしても海外進出が必要な企業にとっては、海外赴任に積極的な人材は非常にありがたいので、大事な行動特性だと思います。

でも、グローバル人材の定義が海外拠点に於いて高業績を上げる人であるならば、その行動特性には別の要素もあるはずと思っていました。

本当のグローバル人材のコンピテンシーは?


そんな時にNewsweek日本版になるほどと思うエントリーがありました。

このサブタイトルにあるように、海外で仕事をする場合には自分の常識が通用しないことが大前提になります。常識の差はいくら説明しても、どうしても埋まらないものです。であるならば、このような環境の中で高業績を達成し続けられるには、「常識の差を説明しなくても済むような仕事の仕方が必要になる」これができることがグローバル人材の行動特性=コンピテンシーの一つです。

このインタビュー記事の最後に次の文章があります。
日本社会は同質性が強過ぎるがゆえに、少しの差がすごく大きな違いに感じられるところがあると思う。超国家コミュニティーは、そこにイラン人もフランス人もインド人もいる世界。瑣末なことに執拗にこだわり続けるというのはあまりない。“

これは、日本とアメリカのウェブコミュニティーの違いについての質問の流れからの発言なので、企業から見たグローバル人材のコンピテンシーとは関係なさそうです。しかし、CAGEの違いがあるなかでチームとしてのパフォーマンスを競合より出すためには、出された意見の欠点をあげつらうのではなく、良いところを評価してその上にさらに良いものを重ねていく行動をチーム全員がする必要があります。特に、リーダーはその行動特性が必要になります。これがダイバーシティー:diversityの本質であり、グローバルな環境で複数の国籍を持った人材で構成されたチームで高業績を出し続けるもう一つのコンピテンシーだと思います。

今回の投稿は、Newsweekの記事に触発されて書き始めました。企業のグローバル化度合いによっても、求めるグローバル人材像は違うと思われます。グローバル人材シリーズの次回は、この観点でまとめてみる予定です。

一部加筆して再掲しています。



*) チャートの最高点を基準として検索インタレストを表した場合の数値です。指定された地域と期間における検索の 10 % が「ピザ」で、この値が最大値であれば、この数値が 100 となります。これは絶対的な検索ボリュームを表しているわけではありません。

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