2013年5月31日金曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(2)


現在ビジネスの世界では、海外事業を推進するグローバル人材が比較的関心の高い話題だと思います。様々な人が様々な事を言っているのが現状ですが、日本の有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものを感じていました。そんなとき、Newsweek日本版のインタビュー記事「アップルの内側から見た「超国家コミュニティー」」を読み、この中で語られている人々の行動特性が、まさに有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものだと感じたという主旨の記事を先日投稿しました

これはどちらが正しいと言う事ではなくて、企業が置かれているまたは目指している状況によって必要な人材のコンピテンシーが違うことからきていると私は考えました。そこで、今回の投稿では、企業のグローバル化の段階で、人材に求められるコンピテンシーが変化するのかを検証してみます。

コンピテンシーの定義


なぜ海外事業の段階によってコンピテンシーが変化するのか。それは、コンピテンシーは下の図にあるように定義されるものだからです。定義の際のポイントは、業務を遂行する際に想定される困難な状況を設定し、この困難な状況に対応するために必要な行動特性を定義する所にあります。

コンピテンシー定義ステップ(例) 法人営業
コンピテンシー定義ステップ:Minoriソリューションズ 就活エンパワーから転載




これによって、ただ単純に活動内容をこなすだけではなく、成果を出す際には非常に重要になる困難状況での対応行動がとれる人材の定義が出来るようになります。

従って、企業活動の内容が変化すると必要なコンピテンシーも変化する可能性があることから、各企業の海外事業の段階によってグローバル人材に求められるコンピテンシーも変化するのではないか。これが、立場によってグローバル人材の定義が変わる理由ではないかと想定した理由です。

海外事業の段階


グローバル人材及びグローバル化の段階についての研究は1980年代後半から日本でも行われてきている。海外進出段階の分類にもいくつかバリエーションがあるが、花田が1988年に発表した5段階説*1)が代表的なものである。その後の企業グローバル化を扱った実務書に大きな影響を与えていると言う事なので、これを基に必要なコンピテンシーを洗い出しました。

日本企業の多くがこの段階のいずれかにいると考えられる①輸出中心段階~③国際化段階についてのみ掲載します。このほかには④多国籍段階、⑤グローバル化段階があります。

 
グローバル化の段階と必要なコンピテンシー
グローバル化の段階と必要なコンピテンシー 出所:日本企業のグローバル化再考1)グローバル化への4つのハードル 柳川 太一。活動内容以下は筆者追記。

レベル感に違いはあるが、海外事業の段階によって違いはない


こうやって洗いだしてみるとグローバル人材には、
1) そもそもビジネスを推進していくことに関わるコンピテンシーが必要なこと。
2) 多くの日本企業の場合、ビジネス推進に必要な仕掛けを用意せずに海外進出することが多いため、仕掛けを自ら構築する事に関わるコンピテンシーが必要なこと。
3) 上記2点に加え、外部とのかかわりのほとんどが進出先の人々になることから異文化、気候、違う制度、などCAGE差異への対応能力が特に必要なことが分かります。

少なくとも③段階までは、必要なレベルの違いはありながらも、項目として必要なコンピテンシーは大きく違いが無い事が明確になりました。④、⑤段階においても、人事制度を変えていく必要性はありますが、コンピテンシーとしての項目に違いは無いと思います。どうやら、海外事業の段階によって必要なコンピテンシーは違うのではないか、という仮説は誤りの様です。

今回のコンピテンシー分析は、組み立て系製造業を想定しています。業種によっては、内容が異なってくる可能性もあるので自社独自の分析をすることをお勧めします。

事業を成功させるには、その環境に適した人材を投入することが非常に重要になると思います。もし、最適な人材が社内にいなくても、必要なコンピテンシーが明確になっていれば、仕掛けや補完手段を準備するなどの対応が可能になります。

コンピテンシーを明確にすることで、「未知の世界に飛び込める行動力」、「 最後までやり抜くタフネスさ」、「   自分の頭で考え、課題を解決する能力」といった能力重視で選んだ人材が、進出先の人々と全くコミュニケーションを取れず事業が失敗しかつ他の場所では能力を発揮できたであろう貴重な人材を失うようなリスクを冒すことも避けられると思います。

是非、自社独自の分析をしてみてください。

*1) 花田光世(1988)「グローバル戦略を支える人事システム(下)」『ダイヤモンド ハーバードビジネスレビュー』

(2013年6月3日:一部加筆修正して再掲します)

2013年5月24日金曜日

インド 結婚に「トイレの証明写真」を義務付け - こんなのもあるCAGE差異

+水谷穣

インド
結婚に「トイレの証明写真」を義務付け
Men Pose With Toilets to Woo Brides
Newsweekの記事にCAGE差異の一例が出ていました。


あまり愉快な記事ではないのですが、考えてみれば日本の汲み取り便所も欧米の人から見れば眉をひそめるようなものだったのでしょうね。

それにしてもなぜ、女性にはトイレが必要ないと思うのでしょうか?・・・

2013年5月23日木曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(1)

+水谷穣


最近取り組み始めた活動の一つに、コンピテンシーベース就活支援があります。コンピテンシーモデルは、ここ数年大手企業を中心に活用が進んでいる人材活用モデルです。これを新卒の採用にも取り入れる企業が出てきており、その背景は次のようなものだと言うことです。

1) 新卒採用の離職率が30%近くなっている
2) 大手企業では、地頭が良い≒偏差値の高い大学から採用した学生を何年かかけて育ててから戦力としていたのですが、リストラの影響で余剰人員が現場におらず、即戦力が求められる傾向が強くなっている。

コンピテンシーは高業績者の行動特性などと訳されます。企業側でこのモデルを採用基準にしている場合、東大理系院生の学校推薦であっても返品率が高くなってきたことへの対応方法論(東大で生まれた究極のエントリーシート )をベースに構築されたものが、コンピテンシーベース就活支援です。サービス名:就活エンパワーズ

某大手総合商社などで企業向けのコンピテンシーモデル導入支援を行っていた方を中心に、クラウドサービスと講義の組み合わせでサービスを提供しています。

グローバル人材はホットな課題

グローバル人材検索トレンド
グローバル人材検索トレンド

Googleの検索トレンドによると投稿執筆時点での検索インタレスト*)4820129月のピークに比べて約半分ですが、それでも月間検索数は14,800ありそこそこ検索されています。また、企業向け研修をビジネスとしている方々からも非常に人気のテーマだと聞きます。アベノミクス成長戦略のキーワードの一つ海外展開を支えるという意味でも比較的ホットな話題です。

グローバル人材の定義


実際に検索を掛けてみると、色々なエントリーがヒットしますが典型的な論旨がまとめられているのは出口治明さんが書かれているこちらではないでしょうか。厚生労働省の雇用政策研究会がヒアリングした結果の取り纏めたそうです。


1.   未知の世界に飛び込める行動力
2.   最後までやり抜くタフネスさ
3.   自分の頭で考え、課題を解決する能力“

これって、「グローバルな人材」に求められる資質というよりは、環境変化が激しい今の日本で求められる人材像の基本的なコンピテンシーではないかと私は思ってしまいます。

海外赴任に積極的ならグローバル人材?


+

「海外赴任を敬遠する人」
・若手・中堅クラスでは増えているとする企業が25.6%1/4を占める一方、減っているとする企業も22.0%と2割超で、増えている企業と減っている企業が拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が20.7%であるのに対して、一方、減っている企業は10.9%
「海外赴任を自ら希望する人」
・若手・中堅では、増えているとする企業、減っているとする企業、いずれも25.0%で拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が7.6%、減っているとする企業が21.3%
ということなので、海外赴任してくれる人の像が厚労省の調査でまとめられている像に近いのではないでしょうか。数多い海外拠点をちゃんと運営する、あるいはどうしても海外進出が必要な企業にとっては、海外赴任に積極的な人材は非常にありがたいので、大事な行動特性だと思います。

でも、グローバル人材の定義が海外拠点に於いて高業績を上げる人であるならば、その行動特性には別の要素もあるはずと思っていました。

本当のグローバル人材のコンピテンシーは?


そんな時にNewsweek日本版になるほどと思うエントリーがありました。

このサブタイトルにあるように、海外で仕事をする場合には自分の常識が通用しないことが大前提になります。常識の差はいくら説明しても、どうしても埋まらないものです。であるならば、このような環境の中で高業績を達成し続けられるには、「常識の差を説明しなくても済むような仕事の仕方が必要になる」これができることがグローバル人材の行動特性=コンピテンシーの一つです。

このインタビュー記事の最後に次の文章があります。
日本社会は同質性が強過ぎるがゆえに、少しの差がすごく大きな違いに感じられるところがあると思う。超国家コミュニティーは、そこにイラン人もフランス人もインド人もいる世界。瑣末なことに執拗にこだわり続けるというのはあまりない。“

これは、日本とアメリカのウェブコミュニティーの違いについての質問の流れからの発言なので、企業から見たグローバル人材のコンピテンシーとは関係なさそうです。しかし、CAGEの違いがあるなかでチームとしてのパフォーマンスを競合より出すためには、出された意見の欠点をあげつらうのではなく、良いところを評価してその上にさらに良いものを重ねていく行動をチーム全員がする必要があります。特に、リーダーはその行動特性が必要になります。これがダイバーシティー:diversityの本質であり、グローバルな環境で複数の国籍を持った人材で構成されたチームで高業績を出し続けるもう一つのコンピテンシーだと思います。

今回の投稿は、Newsweekの記事に触発されて書き始めました。企業のグローバル化度合いによっても、求めるグローバル人材像は違うと思われます。グローバル人材シリーズの次回は、この観点でまとめてみる予定です。

一部加筆して再掲しています。



*) チャートの最高点を基準として検索インタレストを表した場合の数値です。指定された地域と期間における検索の 10 % が「ピザ」で、この値が最大値であれば、この数値が 100 となります。これは絶対的な検索ボリュームを表しているわけではありません。

2013年5月14日火曜日

海外進出が企業にとっての価値を生むのか(2) - リスクと対応策



海外進出が企業にとっての価値を生むのか(1)では、大口取引先の生産海外移管に伴ってどうしても海外進出が必要な
状況を自らの改革のきっかけにできないかという観点での考察を行いました。この場合、進出先を自ら選ぶことはできません。

今回は、自主的に進出を考えるときの基礎的な情報および、リスクとその対応策について考えてみました。

各国の奨励業種


新興国の多くは、それぞれ自国の目指す姿を実現するうえでメリットがあると思わる業種に外資への奨励策を設けています。具体的には法人税を一定期間免除するなどの策が多いようです。これはCAGE分析のA:Administrative 制度 にあたります。

JETROの情報を基に業種ごとにアジア地域の9か国で奨励策があるかないかを纏めています。他の国々の状況及び詳細に関してはJETROのホームページを参照してください。


製造業
インフラ/エネルギー
IT等
サービス
その他
フィリッピン
台湾*1
×
×
×
×
×
ベトナム
×
×
ミャンマー
×
×
マレーシア
×
インド
*2
×
×
シンガポール
タイ
×
×
出典:JETROホームページ 2011年 国・地域データ比較より 筆者作成
*1)特定の業種は無いが、研究開発が奨励されている
*2)研究開発を主目的として企業には優遇有

JETROの国別・地域別データ比較は、人口、宗教などの基礎的情報、基礎的経済指標、貿易為替制度のデータも比較できるので、最初の基礎的情報収集には非常に便利なサイトです。

この表に挙げた9か国の中ではインドが唯一連邦制です。連邦制の場合、規制、税法、商習慣等が違う場合があるので、市場規模を考えるときに考慮が必要です。また、文化的な違いの観点から、民族により嗜好、流通網の違いがある場合があります。基礎的情報を分析するときには、この点も考慮に入れる必要があると思います。

日本語人口


中小企業にとって、進出先で日本語が出来るスタッフを雇用できる環境なのかは気になる点だと思います。直接のデータではないのですが、日本語教育への関心の間接的な指標として日本への留学生数が考えらえます。独立行政法人 日本学生支援機構のホームページに外国人留学生在籍状況調査結果というのがあります。平成24年度の出身国ランキングは次のようになっています。絶対数としてはホームページに記載があるので参照してください。

1)中国 2)韓国 3)台湾 4)ベトナム 5)ネパール 6)マレーシア 7)インドネシア 8)タイ 9)アメリカ画集国 10)ミャンマー

次に総人口に対する割合で並べると次のようになります。(総人口は一部だけの調査)外国留学は金銭的にも負担が大きいのですが、国ごとの経済格差は考慮に入れていません。モンゴル、マレーシアの日本への関心の高さがうかがえる結果になっています。

1)モンゴル 2)韓国 3)台湾 4)マレーシア 5)ネパール 6)中国 7)ベトナム 8)シンガポール 9)タイ 10)スリランカ 11)カンボジア 12)ミャンマー

進出リスク


事業の海外展開を成功させるために必要なものを考える(1)ITに関するリスクは記述しました。一般的な進出時リスクのカテゴリー、要素として主なもの、それぞれの対応戦略は次のようになります。




対応戦略の中身については次回解説します。

2013年5月7日火曜日

世界で成功するための5つのステップ 「コークの味は国ごとに違うべきか」から

+水谷穣

複数回にわたって紹介してきました「コークの味は国ごとに変えるべきか」この投稿が最終回です。今更なのですが、本の目次を紹介しておきます。各章の見出しの下の文章もそのまま引用しています。


“目次
第一部 フラット化しない世界
世界共通戦略を打ち出したコカ・コーラ本部と独自路線を進んだ日本コカ・コーラ。さてその結果は?
第二章 ウォルマートは外国であまり儲けていない
グーグルとウォルマートが国外進出で味わった苦難。グローバル化で消え去ったはずだった「国境」がビジネスにもたらす影響とは?
第三章 ハーゲンダッツはヨーロッパの会社ではない
国境の向こうとこちら-そこにある差異はマイナスばかりではない。そこから価値を生み出せばいいのだ。それを考える枠組みとは?
第二部 国ごとの違いを成功につなぐ
第四章 インドのマクドナルドには羊ハンバーガーがある
第五章 トヨタの生産ネットワークはここがすごい
第六章 だからレゴは後発メーカーの追随を許した
第七章 IBMはなぜ新興国の社員を3倍にしたか
第八章 世界で成功するための5つのステップ
世界が真にグローバルになるのはまだ先のこと。
この不確実な時代にどう対応すればいいのか。真のグローバル戦略実践への処方箋。“


本書におけるパンカジ教授の一貫した主張は、「世界がフラット化することは当面ない、であれば企業がグローバルで活動するためにはその違いを上手にマネージすることが必要であり、多くの企業のやり方を見ると改善の余地が非常に大きい」ということです。国際統合の度合いは、時期的に上がったり下がったりすることはあるかもしれませんが、統合度合いが上がったとしても国ごとの差異が無視できるほどにはなりそうにないし、下がったとしても国際的な経済活動が一切なくなることもないだろうという予測が成り立ちます。

道をしめす


ただ、近代企業のグローバル化の変遷を見ていると、戦争やベルリンの壁崩壊などの体制変更、通貨危機、新興国の台頭など様々な出来事が起きておりそのたびに戦略を変更することは得策ではないと教授は考えているようです。この状況へのアドバイスとしてどの様にクロスボーダー事業に取り組むかの基本姿勢を5つ上げています。

1.たとえ、最終的には世界の統合がもっと進むと信じていても、躓いたり回り道したりすることだってあると考える


クロスボーダー事業は基本的には、長期的なスパンで考える必要があると言う事がメッセージの様です。その例としてゴールドマン・サックスはウォール街で初めてソ連崩壊後のロシアに経営資源を投入した会社ですが、1998年のロシア危機と同国の国債デフォルトの際に撤退し、何年もたった後に再進出したために、2005年時点ではロシア株式・債券引受業務でのランキングが24位だという事例を提示しています。

2.さまざまな、「予測可能なサプライズ」に注意する


先にも述べたように、グローバル環境では大なり小なり予測可能または起こり得るサプライズは存在します。これらのリスクに対応するすべを持つべきで、少なくとも事前にそのインパクトは分析しておくことを勧めています。

3.物事を業界レベルや企業レベルに掘り下げることによって、予測能力を高める


リスクの分析は、マクロではなくてミクロレベルで行うことが必要です。例えば再三リスクの一つとして挙げている為替の変動一つにとっても、その企業の進出形態によって受ける影響は違います。

4.ビジネスが様々な結果(グローバリゼーションの将来に関するものを含む)をもたらすことの重要性を認識する


企業の活動は、社会的な影響力を持つので言動には注意することを勧めています。ユニクロ柳井会長の「年収100万円」発言が最近話題になっていますが、この手のことだと私は理解しました。

5.未来にばかり目を向けて、今をないがしろにしない。


“グローバリゼーションへの風向きが順風か逆風かも含め、未来はグローバル戦略がうまくいくかどうかを大きく左右する。しかし、だからといって影響を及ぼしうる他の要素、特に今そこにある要素をないがしろにしてはいけない。本書で繰り返し強調しているのは、グローバル戦略の今の状況は改善の余地が非常に大きいということである。改善を試みる方法の一つは、行動を始めることだ。図8-1(347ページ)は始めるための5つのステップを描いている。順序は図のとおりでなくてもかまわない。本章の後半はこのステップについて述べる。”

81 グローバル戦略の再検討:実践に取り掛かるための5つのステップ

1.業績の分析
2.業界、競争力の分析
3.差異の分析:CAGEな隔たりの枠組み
4.戦略オプションの策定:AAA戦略
5.価値の評価:ADDING価値スコアカード

戦略の実行に向けて


ここで挙げる五段階のステップは、まず背景分析に始まり、それから戦略オプションの明確な策定と評価に移ります。

1.業績の評価


そもそもグローバル事業がうまくいっているかどうかを評価することは重要です。(筆者注:これから海外進出を考えている企業にとっても国内でのビジネスを再評価することは、そのビジネスモデルをどの様に展開するか考える上で大事だと思います。)この際に少なくとも、地理的な側面で業績を分析するのが重要だと教授は言います。(ただし、分解する際の切り口は、5章で議論したように集約戦略と同じぐらいさまざまです。)

状況を可視化することで、今後何をすべきかを見極めるきっかけになります。

2.業界と競争力の分析


次に9つの問題(感覚ではなく、データに基づいて回答できる)を以下にあげます。これらの問題の分析にあたっては、各業界独自の観点から分析することと、10年以上などの長い時間枠での変化を見ることが大事なようです。

“クロスボーダーでの業界と競争力の分析に関する九つの問題
1.   上位三社から誤射の売上高が占める比率 本当に上昇しているか
2.   業界首位の企業や、業界内の順位、シェアの変動 誰にでもわかる業界首位や中核企業が存在するか。するなら、その地位にある企業どれほどはがしく入れ替わっているか。
3.   世界総生産に対する国際貿易の割合、総固定資本形成に対する海外直接投資の割合、(たとえばクロスボーダーでの買収・合併に対する)国際間の合弁や戦略的提携の割合 こういった国際統合の標準的な尺度がどうなっているか。
4.   クロスボーダーでの標準化(最もはっきりわかるのは製品である) 本当に進んでいるのか
5.   実質価格の下落 これが生産性向上のノルマにどんな影響を及ぼすか。
6.   業界の収益、特に経済的利益 国ごとに収益性がどれほど異なるか
7.   収益性と規模の関係(あれば) 収益性はグローバル、地域、国の各レベルで、あるいは工場や顧客のレベルで規模に左右されるか。
8.   納入業者、競合他社、協力企業、買い手の間における経済的利益の分配 お金はどこに流れているか
9.   広告・マーケティング、研究開発、労働(更に資本や特化したインプット) これらの支出項目の内どれが自社業界では比較的大きいか。また、その点から見ると自社の業界はどんなタイプの業界に分類できるか。”

3.差異の分析:CAGEな隔たりの枠組み


もともと本書は完全にフラット化していく世界=グローバリゼーションに対抗する考え方として、世界はセミ・グローバリゼーションであると言うことを立脚点としています。国ごとに存在する差異を考える枠組みとしてCAGEが紹介され、その差異を測るために隔たりという尺度を使用しています。



これ等には二つの目的があると教授は言っています。
l  数量的な尺度を導入することで、より客観的な議論を展開する
l  本拠地の国からの隔たりを考慮せず、国を一面的に特徴づけて行う、よくある類の分析を退け、議論に二面的または多面的な要素を加える。

4. 戦略オプションの策定:AAA戦略


国ごとの差異を味方につける戦略として「適応」「集約」「裁定」が紹介されました。これらを適用する手続きの重要な点として、次の三点が挙げられています。

“まず評価を行う段階では選択肢を複数持っておいた方がいい。次に、戦略オプションは虚空から突然出現することは無い。策定し、更に策定の事跡を残すべきである。第三に、検討する戦略オプションの選択肢を改善することに、戦略オプションそのものの評価を改善することと同じだけ気を配る必要がある”

5.価値の評価:ADDING価値スコアカード


教授のもう一つの主張は、グローバル活動の評価には売上高や損益計算書上の利益ではなく「価値」を使うべきだということです。単に売上高だけで海外進出を決める危険性は、前回の投稿でも触れています。前回の投稿で二つの戦略を紹介しましたが、その評価に使ったのがADDING価値スコアカードです。
本書の内容紹介1回目でその抜粋版を紹介しましたが、重要な内容なので全体を掲載します。


ADDING価値スコアカードの応用


内容紹介とADDING価値スコアカードの適応例で七回にわたって投稿してきました。
本としてはグローバルに手広く展開している企業の海外戦略を見直すためのガイドラインとして活用してもらう事を目的としていますが、今後増えるであろう中小規模の海外進出を成功させるための拠り所としても使えると思います。特にCAGE分析とADDING価値スコアカードはユニーク且つ、一般的な市場分析では得られない気づきやリスクを洗い出すツールとして有用だと思います。御社の海外戦略立案・見直しに是非活用いただければと思います。