現在ビジネスの世界では、海外事業を推進するグローバル人材が比較的関心の高い話題だと思います。様々な人が様々な事を言っているのが現状ですが、日本の有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものを感じていました。そんなとき、Newsweek日本版のインタビュー記事「アップルの内側から見た「超国家コミュニティー」」を読み、この中で語られている人々の行動特性が、まさに有識者たちがまとめたグローバル人材の定義に物足りないものだと感じたという主旨の記事を先日投稿しました。
これはどちらが正しいと言う事ではなくて、企業が置かれているまたは目指している状況によって必要な人材のコンピテンシーが違うことからきていると私は考えました。そこで、今回の投稿では、企業のグローバル化の段階で、人材に求められるコンピテンシーが変化するのかを検証してみます。
コンピテンシーの定義
なぜ海外事業の段階によってコンピテンシーが変化するのか。それは、コンピテンシーは下の図にあるように定義されるものだからです。定義の際のポイントは、業務を遂行する際に想定される困難な状況を設定し、この困難な状況に対応するために必要な行動特性を定義する所にあります。
コンピテンシー定義ステップ:Minoriソリューションズ 就活エンパワーから転載 |
これによって、ただ単純に活動内容をこなすだけではなく、成果を出す際には非常に重要になる困難状況での対応行動がとれる人材の定義が出来るようになります。
従って、企業活動の内容が変化すると必要なコンピテンシーも変化する可能性があることから、各企業の海外事業の段階によってグローバル人材に求められるコンピテンシーも変化するのではないか。これが、立場によってグローバル人材の定義が変わる理由ではないかと想定した理由です。
従って、企業活動の内容が変化すると必要なコンピテンシーも変化する可能性があることから、各企業の海外事業の段階によってグローバル人材に求められるコンピテンシーも変化するのではないか。これが、立場によってグローバル人材の定義が変わる理由ではないかと想定した理由です。
海外事業の段階
グローバル人材及びグローバル化の段階についての研究は1980年代後半から日本でも行われてきている。海外進出段階の分類にもいくつかバリエーションがあるが、花田が1988年に発表した5段階説*1)が代表的なものである。その後の企業グローバル化を扱った実務書に大きな影響を与えていると言う事なので、これを基に必要なコンピテンシーを洗い出しました。
日本企業の多くがこの段階のいずれかにいると考えられる①輸出中心段階~③国際化段階についてのみ掲載します。このほかには④多国籍段階、⑤グローバル化段階があります。
レベル感に違いはあるが、海外事業の段階によって違いはない
こうやって洗いだしてみるとグローバル人材には、
1) そもそもビジネスを推進していくことに関わるコンピテンシーが必要なこと。
2) 多くの日本企業の場合、ビジネス推進に必要な仕掛けを用意せずに海外進出することが多いため、仕掛けを自ら構築する事に関わるコンピテンシーが必要なこと。
3) 上記2点に加え、外部とのかかわりのほとんどが進出先の人々になることから異文化、気候、違う制度、などCAGE差異への対応能力が特に必要なことが分かります。
少なくとも③段階までは、必要なレベルの違いはありながらも、項目として必要なコンピテンシーは大きく違いが無い事が明確になりました。④、⑤段階においても、人事制度を変えていく必要性はありますが、コンピテンシーとしての項目に違いは無いと思います。どうやら、海外事業の段階によって必要なコンピテンシーは違うのではないか、という仮説は誤りの様です。
今回のコンピテンシー分析は、組み立て系製造業を想定しています。業種によっては、内容が異なってくる可能性もあるので自社独自の分析をすることをお勧めします。
事業を成功させるには、その環境に適した人材を投入することが非常に重要になると思います。もし、最適な人材が社内にいなくても、必要なコンピテンシーが明確になっていれば、仕掛けや補完手段を準備するなどの対応が可能になります。
コンピテンシーを明確にすることで、「未知の世界に飛び込める行動力」、「 最後までやり抜くタフネスさ」、「 自分の頭で考え、課題を解決する能力」といった能力重視で選んだ人材が、進出先の人々と全くコミュニケーションを取れず事業が失敗しかつ他の場所では能力を発揮できたであろう貴重な人材を失うようなリスクを冒すことも避けられると思います。
是非、自社独自の分析をしてみてください。
事業を成功させるには、その環境に適した人材を投入することが非常に重要になると思います。もし、最適な人材が社内にいなくても、必要なコンピテンシーが明確になっていれば、仕掛けや補完手段を準備するなどの対応が可能になります。
コンピテンシーを明確にすることで、「未知の世界に飛び込める行動力」、「 最後までやり抜くタフネスさ」、「 自分の頭で考え、課題を解決する能力」といった能力重視で選んだ人材が、進出先の人々と全くコミュニケーションを取れず事業が失敗しかつ他の場所では能力を発揮できたであろう貴重な人材を失うようなリスクを冒すことも避けられると思います。
是非、自社独自の分析をしてみてください。
*1) 花田光世(1988)「グローバル戦略を支える人事システム(下)」『ダイヤモンド ハーバードビジネスレビュー』
(2013年6月3日:一部加筆修正して再掲します)
(2013年6月3日:一部加筆修正して再掲します)