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2013年6月17日月曜日

「適応」戦略を実験しているテレビ番組発見!


6月9日日曜日、全然気合が入らず家でゴロゴロしていたらテレビ朝日で「日本のアレは世界で売れんのか?」という番組をやっていました。

中小企業が海外進出をする際にお奨めしているCAGE分析、ADDING価値分析のわかり易い実例だと思い投稿します。その他購買心理学の実例など、マーケティングのわかり易い教科書の様な内容でかつ、低リスクで海外進出を行うための示唆に富んでいると思うので、紹介します。

番組の概要はこちらです。
“日本人になじみの深いモノは本場・海外でも売れるのか!?たらこスパをイタリアで、カレーパン&うどんをインドで…。日本の誇りを胸に世界へ挑む!その意外な結果とは!?
“

テーマは三つ


いずれも日本では、実績のある商品。海外での販売勝負に挑んだのは、三つのテーマでした。

1)ナポリタンvsたらこスパ

ナポリタンとたらこスパ、それぞれをパスタの発祥の地イタリアで昼食時間12時から15時の間三日間販売し、どちらの店がより販売数を上がられるかという勝負をする。ナポリタンは都内に数店舗展開している「ナポリタン専門店パンチョ」。かたやたらこスパは、「すぱじろう」がそれぞれ代表選手としてナポリと、ベネチアに乗り込んだ。結果は、たらこスパの勝ち。

2)カレーパンとカレーうどん


同様にカレーの本場インドにカレーパン(代表選手 ビストロ喜楽亭)とカレーうどん(代表選手 古奈屋)が1)と同じ方式で対決し、結果はカレーパンの勝ち。

3)洗濯物干しvsクールマットvs薄毛対策商品

こちらは、ベトナムの市場調査をしたうえでの三商品の対決。
1)、2)と対決方式が違うのは販売日数が一商品につき1日、それぞれの商品を売った場所は同じ場所、値段設定が3つの商品で若干違うこと。結果は、クールマットがダントツの一位。

番組を観てポイントは四つあるとおもいました。

① 価格はすべて現地類似商品群の価格帯に合わせていた事から、経済格差に関する差異は大きいと思われる。


ただし、市場価格感から大きく外れるものではない限り、多少の金額差は、問題にならないと思われます。なぜなら、テーマ3)の三つの商品の中では一位になったクールマットが一番高価でした。

② 「適応」は文化に根差したものには必ず必要である。


1)2)はそれぞれ食べ物がテーマになっていました。食べ物対決は三日間で行われるため、四チームそれぞれが顧客からのフィードバックを受けて次のような「適応」を行い、初日に比べて二日目、三日目と売り上げを伸ばしていました。順番にその内容を見てみます。

a) ナポリタン


「ナポリタン」という実は日本の食文化に根差したスパゲティー。この根本になっているのが、次の二つの要素です。具は、玉ねぎを多用し日本特有の小さいソーセージがメインであること。ソースはイタリアでは全くと言って人気が無いケチャップがメインであること。

店側としては、味の根本のソースを変更するとナポリタンではなく、普通のイタリア料理のパスタになってしまうという想いから、具を適応させていたました。

ソーセージをパンチェッタ(塩漬けした豚バラ肉。カルボナーラ等に使われるイタリアベーコン)に変更し、玉ねぎは可能な限り小さくしてその存在感を消すという対応を行っていました。

ちなみに、欧米では「玉ねぎ臭い」という表現は、不潔とかあか抜けないやつとかエチケットをわきまえない人のイメージがあり、相手を侮辱するときに使う表現です。

その他、二日目には同じ値段でのサイズの選択肢を増やし、三日目には目玉焼きとルッコラのトッピングを選べるようにするなど、売り方についての「適応」も試していました。

私見ですが、初日売り上げ数一桁という低調さを挽回するのに一番効果のあった「適応」は玉ねぎの存在感を消したことにあったのではないかと推測しています。

b) たらこスパ


このチームが行った適応は、辛い味の選択を増やすことのみでした。辛子明太子をわざわざ往復5時間かかるミラノまで仕入れに行っていたため、実質的には二日目を棒に振ってしまいました。

しかし、三日目はたらこスパと明太子スパ二種類を用意したことで、売り上げが伸び勝利につながっています。

c) カレーパン


このチームが実施した「適応」は4つです。その一番目は、気象条件が違う事から仕込時に発生した「カビ」への対処でした。牛、豚は宗教上の理由から食べない人が多いので、マトンを使って販売開始前日に仕込んだカレーのタネに3時間程度寝かしているうちにカビが発生してしまったのです。翌朝仕込し直し、出来たカレーのタネを急速冷凍させることで対応していました。

二番目は、ベジタリアン向けのカレーパンを用意したこと。インドでは、半数近くがベジタリアンだそうです。実際、販売初日に店に立ち寄った最初の数組はベジタリアンでした。この状況を見て、二日目からは数種類の野菜が入ったカレーパンを用意し、売上数を伸ばしていました。

三番目は、イタリアでは全く人気のなかったケチャップです。インドでは揚げ物に「ケチャップ」が定番だそうです。最初のお客さんがケチャップ無いの?と聞いたので用意したところ、二つ目をお買い上げになっていました。その後のお客さんも争うように、ケッチャップを付けて食べていたのが印象的です。

最後は、やはり辛さです。日本人の好みより数段辛くすることで、売上を伸ばしていました。

d)カレーうどん


このチームが行った適応は、麺の長さを短くすることと辛くすることの二つです。特に麺の長さを短くすることで、ぐっと売上増につながったようです。

これは、初日に購入してくれた顧客の完食が少なかったことから、カップめんなどを購入して分析した結果(現地のスタッフにはあらかじめ分かっていたのかもしれませんが)麺が短い事が判明したための対応です。

③ 購買心理はどの国でも同じ。


合計七つのチームがこの企画に参加したのですが、どのチームも現地の言葉で書かれた看板、ノボリを用意していました。つたない現地語で呼び込みをするのですが、共通していた現象としては、「人が集まりだすと、それまで遠巻きにしていた人たちが一気に集まってくる」ということです。

人は、あるものに興味を頂いた後にそれを手に入れる行動を起こす前に検討に入るといいます。自分にとって必要か?本当に大丈夫かを吟味するわけです。この番組で見られたのは、他人がそこにいることで検討の壁が一気に低くなった現象だと思われます。

もう一つは、効果を実感すると欲しいと思うようになると言う事です。テーマ3)はいずれも日用雑貨で事前の調査により、ある程度ニーズがあると思われた商品群でした。ご想像のとおり、見ることで効果が実感できるので洗濯物干しと薄毛対策商品はデモンストレーションが比較的簡単ですよね。

実際に一番効果訴求に苦労していたのが、クールマットでした。これを打破したのが、商品をはさみで切って見学していた人の腕に巻きつける行為でした。

この行為によって、集まってきた人に冷たいマットという効果が伝わり、そのことが一気に「目あたら良いモノへの関心」から「欲しい」に寄り爆発的な売り上げを生み出し、完売という状況を生み出したようです。当日限りという期間限定も爆発的な行動に拍車をかけた要因だと思われます。

④ 売るための仕掛けが出来ていた。


食べ物チームは、売り子さんと作る人がほぼ同じ人で、「適応」に必要な顧客の声が商品を創る側にダイレクトに伝わる仕掛けになっていた言えます。結果、その適応スピードを速くすることが出来、適応した結果のフィードバックも即座に得られることが出来たために更に良い方向への適応が強化されたと言うことだと思います。

日用雑貨の三チームも商品開発まではフィードバックされませんが、

Attention(顧客の注意を引く)
Interest(顧客に商品を訴求し関心を引く)
Desire(顧客に商品への欲求があり、それが満足をもたらすことを納得させる)
Action(顧客に行動を起こさせる)

を店頭で実行した結果が、成績の差はありましたが全くと言って
認知されていない商品を販売することができた成果につながっていると思います。

⑤ とはいっても商品力は大事である。


3つのテーマのそれぞれの勝者は、相対的にその市場にあった訴求価値を持っているものだと思われます。1)のパスタ対決では、イタリア人のパスタのイメージに近い、たらこスパにシンプルなパスタには辛みを求めるイタリア人の味覚に合った明太子スパを追加し選択肢を広げることで販売数をさらに伸ばし勝利しています。

2)のカレー対決でも、元々それに近い料理があるカレーパンが勝利しています。横道にそれますが、カレーうどんは麺を短くすることで食べやすさを実現し、売上を伸ばしていました。

余談ですが、番組では店先で食べている光景が映し出されており、他にテーブルを用意するなど店先の回転率を上げると、もう少し売り上げは伸びたのかもしれません。

3)の日常雑貨の勝者は、クールマットでした。寝具は一人一人が使う物であり、5人家族なら5枚必要というのが直感的に訴求できる商品だったと思われます。実際一人で15枚買った女性のインタビューでは、自分の家族用に5枚、親戚に10枚と言っていました。


実際の海外進出に取り込むには?


まず、海外進出するには、進出先でビジネスモデルを成り立たせる必要があり、その観点からいうと現地との経済格差をどう埋めるかがポイントになると思います。

次に、リスク分析の観点で最小限のコストでCAGE分析、ADDING価値分析を実地に行っている点が非常に示唆に富んでいました。

CAGE分析、ADDING価値分析といってもアカデミックに分析する事をお勧めしているわけは決してありません。これ等の分析に含まれている観点を検証することが重要だと思います。特に、日本でのやり方をそのまま持ち込むことを前提にそれぞれの企業にとって大きな投資をすることは避けるべきです。

この脈略の中で、今回特に示唆に富んでいると思うのは、いずれのチームも本当にミニマムな設備しかない屋台あるいは、居ぬきの店舗を短期間借りて「実験」を行っていることです。

多分これは、テレビ制作の人たちにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、一般の企業からはなかなか出てこない発想だと思いました。

しかし、その結果上述した様に様々な検証結果を導き出すことが出来、それぞれの企業にとっての海外進出を成功させるためのポイントにつながると思います。

実際に進出先での店舗を借りるなど伝手が無いとなかなか難しいかもしれません。また、生産財などは「実験」が難しい側面はあると思います。この考え方を応用することで、CAGE分析・ADDING価値分析を事前にかつ有効に実施できるのではないかと思います。

最後に、この番組はゲームとしてそれぞれの対決を行っています。なので、短期間日本からのスタッフが出張することで対応していました。

「実験」フェーズでは、もちろん日本からのスタッフが対応する必要があります。実際のビジネスを立ち上げるにあたっては、上述の5つのポイントを仮説検証し続ける仕掛けを構築・運用する必要があると思います。

御社での海外進出にも、この考え方を活用してみてください。



2013年6月12日水曜日

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (2)

+水谷穣


前回の投稿では、カテゴリー1:固定費の内要素2:事務所までのリスク対応戦略について記述しました。今回は、固定費カテゴリーの残り三つの要素について記述します。


海外進出時のリスクとその対応策
海外進出時のリスクとその対応策



1.3.1 アウトソース


固定費カテゴリーの3つ目の要素は、間接スタッフです。基本的な考え方として、事業にとって価値を生まない又は、自社の競争優位性に寄与しない業務に関してはアウトソースするものだと考えるべきです。

経理に関しては、単純な記帳(Book keeping)を対象としています。資金繰りなども含めた経営数値に関しての判断をするレベルを求めるのであれば、シッカリした人材を雇用すべきだと思います。

ただ、スタートアップ時には経営者自らが事業に関わる数値を把握するべきこと、単なる経理屋ではなく経営的な判断をできる人財はなかなか見つからないので、立ち上げ当初は営業バックグラウンドの方であっても自らが数値の把握に努めるべきだと私は思います。

記帳そのものは、価値を生み出す作業ではないのと税法・会計規則を順守した処理を行う必要があるのでアウトソースを前提に考えることをお勧めします。

受付、アシスタント、通訳なども同様です。国によりますが雇用すると、解雇を行うためにものすごい労力を費やさざるを得なくなる場合があります。このリスク回避の観点からも、アウトソースを検討する必要はあると思います。

1.4.1 レンタル工場活用



現地法人が直面している事業環境面の課題・リスク固定費カテゴリーの四つ目の要素は工場です。「製造業にとって工場は重要なのだから、シッカリしたものを立てる必要があるだろう。」というご意見もあると思います。

しかし、工場設備だけがあっても十分な品質のモノは作れません。モノ作り、品質、基本的な作業を習得した工場を動かす人財がなければ、製品は作れないのです。

現地法人が直面している商取引面の課題・リスク
ここに挙げた2つの図にあるように、人材の確保、品質の担保は海外進出企業にとっては大きな課題です。海外人材を育成するノウハウを蓄積できるまでは、比較的簡単な製品を作ることがその対応策になっています。

こういう状況を考えると、最初から最先端の向上を建設するのではなく、レンタル工場を活用することが得策と考えられます。

JETROのサイトに、レンタル工場の紹介がありますので参考にしてください。



1.4.2 低設備投資工場


同じ理由から、工場内に設置する設備も最初から最新のものである必要はありません。日本で不要になった中古の設備等を活用することを検討することが良いと思います。

1.4.3 アライアンス


海外工場開設にリスクがあるのであれば、そのリスクそのものを無くしてしまおうというのが、こちらの戦略です。ただし、上の図にあるように、ビジネスパートナーの確保も比率は低いですが、課題と考えている進出済み企業もあります。

更に、遠隔地から海外の企業をコントロールし納期を順守してもらい、品質を担保する、知的財産権の保護を担保することは非常にハードルが高いのではないかと思われます。

次のM&Aも含めて、客観的なリスク分析及び対応策の検討、ADDING価値分析を行って判断をするべきだと思います。アパレルでは海外工場に委託することは当たり前です。また、Keyenceに代表されるファブレス企業にとってはハードルが低い手法ですがM&Aも含めて、なぜこの戦略を取る必要があるかの明確化がポイントになります。

1.4.4 M&A


この戦略も、海外工場開設リスクそのものを無くしてしまう事を目的としています。
こちらの日本公庫総研のレポート(中小企業の「生産拠点を持たない海外展開」戦略)第3章に取組のポイントが紹介されているのといくつかのケーススタディーが載っているので、参考にしてください。

このレポートに書かれていない一般的なM&Aの留意点としては、業務なデューデリジェンス(DD)実施にあります。

財務的なDDは必ず実施されますが、M&Aを多数手掛けている総合商社でも業務的なDDは実施していないケースが多々あります。結果、買収後業務を開始してから様々な不都合が見つかることが多々あります。大手商社は体力もあるので、多少の思惑違いは乗り越えてしまいますが、体力のない中小企業にとってM&Aの失敗は命とりです。多少手間はかかりますが業務的なDDの実施をお勧めします。

1.5.1 リース


固定費カテゴリーの五つ目の要素は、その他の設備です。海外ではリースをする事での税法上のメリットはほぼありませんが、立ち上げ時のキャッシュアウトを抑える効果があります。

1.5.2 IT:クラウドサービスの活用


クラウドサービスの利点は三つあります。一つ目は立上げに要する時間が圧倒的に短い事です。

種々のIT機能を自前で構築しようとすると、自社内にサーバーを立てたりする必要が出てきます。本社の環境を使う事も可能ですが、海外で使えるようにするには様々なセキュリティー処置を取る必要があります。なので、準備期間が3ヶ月から6か月ほど必要になります。

一方でクラウドサービスは、インターネットへのアクセスさえできればすぐにでも使用可能です。

二つ目のメリットは、TCO(Total Cost of Ownership)が低い事です。上述したように、IT環境の構築はほとんど不要になるので初期投資を抑えることが出来ますし、種々のランニングコストも不要です。

海外拠点では人材の確保が難しい事は既に言及しました。ITの人材を確保することは、本業の人材を確保することよりさらに難しくなります。IT人材の人件費及び労務管理もクラウドを活用することで削減が可能になります。

最後のメリットは、意外かもしれませんが高いセキュリティーと可用性の担保が可能になる事です。慎重に選択する必要はありますが、世界中で使用可能なクラウドサービスでは、一企業では採用できないレベルの可用性、バックアップ体制、災害対応を取り入れています。

Google、Amazonなどの世界的なクラウドサービス会社は、SAS70 TypeII、PCI DSSの要件に準拠しています。これらの基準の要件を見ると、一流企業の基幹系システムでもコスト高から採用を見送るような要件(例としてリアルタイムバックアップと、オフサイトバックアップの併用等)があり、それを満たしています。

例えば、Google Appsではe-mail、ドキュメント共有、グループウェアなどが提供されています。詳しくは、「Googleクラウドを使いたおすとこんなことが出来るらしい」を参照してください。


図「現地法人が直面している商取引面の課題・リスク」にあるように海外での課題に、現地でのマーケティングとビジネスパートナーの確保があります。最終的には、現地での活動が必要になりますがクラウドサービスを活用することで、進出前から準備を進めることが可能になります。

例えば、NetSuiteではWebサイトのホスティング、CRM、顧客セルフサービス、ECサイトのホスティング、ERP機能が複数言語、複数通貨で提供しています。このサービスを活用することで、日本で進出国向けのランディングページを含んだホームページを立ち上げ、見込み客を先行して確保し、そのままデータ移行をせずに進出先で引き続き業務を遂行することが出来ます。

また、市場から優良顧客へのプロセスをCRMに実装することで、進出国のスタッフへベストプラクティスを移植する支援を行う事も可能になります。

当然これらの業務状況は、日本からも見ることが出来るので、財務状況だけでなく業務レベルでの可視化を実現することが可能になり、海外事業の可視化レベルを非常に高いレベルで実現することが可能です。


ここまでで33の戦略の内11を紹介してきました。残りの22の戦略についても順次投稿していきます。

(2013年6月18日 海外進出時のリスクとその対応策に一部加筆しました)

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (1)


2013年6月9日日曜日

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (1)

+水谷穣

海外進出が企業にとっての価値を生むのか(2) - リスクと対応策でリスク対応戦略の洗い出しをしました。複数回に分けてそれぞれの戦略の中身について説明していきます。

前回掲載した表に項目番号を付けたのが下の表になります。

海外進出時のリスクとその対応策
海外進出時のリスクとその対応策


カテゴリー1では固定費を可能な限り低減するという観点で5つの要素について触れました。そのうち人件費とくに日本人駐在員の費用は経済格差のある新興国では非常に大きな割合を占める費用になります。特に販売拠点としての進出であると、消費財・生産財問わず売上単価が日本より低くなることが想定されますので、費用に占める割合は高くなってきます。


1.1.1 現地化+状況の可視化


住宅費、学費などの様々な補助、渡航費、医療費等日本人駐在員の費用は一人当たり2千万円~3千万円程度かかると言われています。これを進出直後で経営の安定していない、海外拠点が負担することは大変な負担になるため可能な限り駐在員は減らしたいところです。

一方で海外進出企業の悩みの多くは、言葉と文化の問題に根差したコミュニケーションの取りにくさに起因したものです。これを補完するために、立ち上げ当初は本社持ちで多くの日本人を送り込み(用意できればですが)業務が安定したところで、引き上げるといったやり方をする企業が多いようです。

ところが、日本人が引き上げて1-2年すると業務がガタガタになり、また日本人がテコ入れ部隊として投入される。こんなことを繰り返している日本企業を海外ではよく見ました。

このような状況を生まないための方策が状況の可視化手段導入です。この際に結果だけを可視化するのではなく、言葉や文化が違ってもそれを一つ一つ説明しなくてもよいような仕事の仕方を含めて可視化してく事がポイントになります。

例えば、営業関連であれば、マーケットから優良顧客を造りだす手順を整理し、担当、マネージャー、部署がそれぞれどんな状況の時には、何を、どうやってやるかを明確化し、それぞれの手順の活動状況と結果を合わせて可視化していく事が必要です。

1.2.1 間借り


事務所に関わる費用が固定費削減の二番目の要素になります。

国によって事情は違いますが、事業用・住宅用問わず投資家に有利な環境・制度になっている国が日本と比べて多いと思います。このため、契約期間が長い、途中解約の場合のペナルティーが厳しい、立ち上げ時の規模に合ったスペースの物件が少ないなどの事情があります。

このようなリスクを回避する策として、業務提携先がある場合その企業に一定期間間借りさせてもらうことも検討できると思います。

1.2.2 アライアンス


固定費と進出リスクを低減するために、既にその進出先で業務を行っている企業との業務提携(代理店契約その他)を行うのがこの対応策です。医薬品などの一部業種では、R&Dを行うためには代理店契約だけではだめで、子会社設立が必要な場合もあります。計画している事業を行うためにはどんな形態が必要なのかは、国ごとに事前調査を行ってください。

1.2.3 サービスオフィスの活用


間借りと同じ様な対応策になりますが、業務提携先などが無い場合でも採用できる固定費削減施策です。

一般的にサービスオフィスでは種々の届出、経理などの業務受託サービスなどを併設している場合が多いです。外資のサービスオフィスは色々なところに展開していますが、日本語でのサービスは一般的ではありません。日系の場合JETROやSENTRO(マレーシア)があります。日本語でのサービスを受けることも可能なので、初めて進出される企業には外資のサービスオフィスよりとっつきやすいかもしれません。


続く

(2013年6月18日 海外進出時のリスクとその対応策に一部加筆しました)

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (2)


2013年5月23日木曜日

グローバル人材とは何かをコンピテンシーモデルで考える(1)

+水谷穣


最近取り組み始めた活動の一つに、コンピテンシーベース就活支援があります。コンピテンシーモデルは、ここ数年大手企業を中心に活用が進んでいる人材活用モデルです。これを新卒の採用にも取り入れる企業が出てきており、その背景は次のようなものだと言うことです。

1) 新卒採用の離職率が30%近くなっている
2) 大手企業では、地頭が良い≒偏差値の高い大学から採用した学生を何年かかけて育ててから戦力としていたのですが、リストラの影響で余剰人員が現場におらず、即戦力が求められる傾向が強くなっている。

コンピテンシーは高業績者の行動特性などと訳されます。企業側でこのモデルを採用基準にしている場合、東大理系院生の学校推薦であっても返品率が高くなってきたことへの対応方法論(東大で生まれた究極のエントリーシート )をベースに構築されたものが、コンピテンシーベース就活支援です。サービス名:就活エンパワーズ

某大手総合商社などで企業向けのコンピテンシーモデル導入支援を行っていた方を中心に、クラウドサービスと講義の組み合わせでサービスを提供しています。

グローバル人材はホットな課題

グローバル人材検索トレンド
グローバル人材検索トレンド

Googleの検索トレンドによると投稿執筆時点での検索インタレスト*)48と2012年9月のピークに比べて約半分ですが、それでも月間検索数は14,800ありそこそこ検索されています。また、企業向け研修をビジネスとしている方々からも非常に人気のテーマだと聞きます。アベノミクス成長戦略のキーワードの一つ海外展開を支えるという意味でも比較的ホットな話題です。

グローバル人材の定義


実際に検索を掛けてみると、色々なエントリーがヒットしますが典型的な論旨がまとめられているのは出口治明さんが書かれているこちらではないでしょうか。厚生労働省の雇用政策研究会がヒアリングした結果の取り纏めたそうです。


“1.   未知の世界に飛び込める行動力
2.   最後までやり抜くタフネスさ
3.   自分の頭で考え、課題を解決する能力“

これって、「グローバルな人材」に求められる資質というよりは、環境変化が激しい今の日本で求められる人材像の基本的なコンピテンシーではないかと私は思ってしまいます。

海外赴任に積極的ならグローバル人材?


+

“「海外赴任を敬遠する人」
・若手・中堅クラスでは増えているとする企業が25.6%と1/4を占める一方、減っているとする企業も22.0%と2割超で、増えている企業と減っている企業が拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が20.7%であるのに対して、一方、減っている企業は10.9%。
「海外赴任を自ら希望する人」
・若手・中堅では、増えているとする企業、減っているとする企業、いずれも25.0%で拮抗。
・管理職では、増えているとする企業が7.6%、減っているとする企業が21.3%。“
ということなので、海外赴任してくれる人の像が厚労省の調査でまとめられている像に近いのではないでしょうか。数多い海外拠点をちゃんと運営する、あるいはどうしても海外進出が必要な企業にとっては、海外赴任に積極的な人材は非常にありがたいので、大事な行動特性だと思います。

でも、グローバル人材の定義が海外拠点に於いて高業績を上げる人であるならば、その行動特性には別の要素もあるはずと思っていました。

本当のグローバル人材のコンピテンシーは?


そんな時にNewsweek日本版になるほどと思うエントリーがありました。

このサブタイトルにあるように、海外で仕事をする場合には自分の常識が通用しないことが大前提になります。常識の差はいくら説明しても、どうしても埋まらないものです。であるならば、このような環境の中で高業績を達成し続けられるには、「常識の差を説明しなくても済むような仕事の仕方が必要になる」これができることがグローバル人材の行動特性=コンピテンシーの一つです。

このインタビュー記事の最後に次の文章があります。
“日本社会は同質性が強過ぎるがゆえに、少しの差がすごく大きな違いに感じられるところがあると思う。超国家コミュニティーは、そこにイラン人もフランス人もインド人もいる世界。瑣末なことに執拗にこだわり続けるというのはあまりない。“

これは、日本とアメリカのウェブコミュニティーの違いについての質問の流れからの発言なので、企業から見たグローバル人材のコンピテンシーとは関係なさそうです。しかし、CAGEの違いがあるなかでチームとしてのパフォーマンスを競合より出すためには、出された意見の欠点をあげつらうのではなく、良いところを評価してその上にさらに良いものを重ねていく行動をチーム全員がする必要があります。特に、リーダーはその行動特性が必要になります。これがダイバーシティー:diversityの本質であり、グローバルな環境で複数の国籍を持った人材で構成されたチームで高業績を出し続けるもう一つのコンピテンシーだと思います。

今回の投稿は、Newsweekの記事に触発されて書き始めました。企業のグローバル化度合いによっても、求めるグローバル人材像は違うと思われます。グローバル人材シリーズの次回は、この観点でまとめてみる予定です。

一部加筆して再掲しています。



*) チャートの最高点を基準として検索インタレストを表した場合の数値です。指定された地域と期間における検索の 10 % が「ピザ」で、この値が最大値であれば、この数値が 100 となります。これは絶対的な検索ボリュームを表しているわけではありません。