2013年6月9日日曜日

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (1)

+水谷穣

海外進出が企業にとっての価値を生むのか(2) - リスクと対応策でリスク対応戦略の洗い出しをしました。複数回に分けてそれぞれの戦略の中身について説明していきます。

前回掲載した表に項目番号を付けたのが下の表になります。

海外進出時のリスクとその対応策
海外進出時のリスクとその対応策


カテゴリー1では固定費を可能な限り低減するという観点で5つの要素について触れました。そのうち人件費とくに日本人駐在員の費用は経済格差のある新興国では非常に大きな割合を占める費用になります。特に販売拠点としての進出であると、消費財・生産財問わず売上単価が日本より低くなることが想定されますので、費用に占める割合は高くなってきます。


1.1.1 現地化+状況の可視化


住宅費、学費などの様々な補助、渡航費、医療費等日本人駐在員の費用は一人当たり2千万円~3千万円程度かかると言われています。これを進出直後で経営の安定していない、海外拠点が負担することは大変な負担になるため可能な限り駐在員は減らしたいところです。

一方で海外進出企業の悩みの多くは、言葉と文化の問題に根差したコミュニケーションの取りにくさに起因したものです。これを補完するために、立ち上げ当初は本社持ちで多くの日本人を送り込み(用意できればですが)業務が安定したところで、引き上げるといったやり方をする企業が多いようです。

ところが、日本人が引き上げて1-2年すると業務がガタガタになり、また日本人がテコ入れ部隊として投入される。こんなことを繰り返している日本企業を海外ではよく見ました。

このような状況を生まないための方策が状況の可視化手段導入です。この際に結果だけを可視化するのではなく、言葉や文化が違ってもそれを一つ一つ説明しなくてもよいような仕事の仕方を含めて可視化してく事がポイントになります。

例えば、営業関連であれば、マーケットから優良顧客を造りだす手順を整理し、担当、マネージャー、部署がそれぞれどんな状況の時には、何を、どうやってやるかを明確化し、それぞれの手順の活動状況と結果を合わせて可視化していく事が必要です。

1.2.1 間借り


事務所に関わる費用が固定費削減の二番目の要素になります。

国によって事情は違いますが、事業用・住宅用問わず投資家に有利な環境・制度になっている国が日本と比べて多いと思います。このため、契約期間が長い、途中解約の場合のペナルティーが厳しい、立ち上げ時の規模に合ったスペースの物件が少ないなどの事情があります。

このようなリスクを回避する策として、業務提携先がある場合その企業に一定期間間借りさせてもらうことも検討できると思います。

1.2.2 アライアンス


固定費と進出リスクを低減するために、既にその進出先で業務を行っている企業との業務提携(代理店契約その他)を行うのがこの対応策です。医薬品などの一部業種では、R&Dを行うためには代理店契約だけではだめで、子会社設立が必要な場合もあります。計画している事業を行うためにはどんな形態が必要なのかは、国ごとに事前調査を行ってください。

1.2.3 サービスオフィスの活用


間借りと同じ様な対応策になりますが、業務提携先などが無い場合でも採用できる固定費削減施策です。

一般的にサービスオフィスでは種々の届出、経理などの業務受託サービスなどを併設している場合が多いです。外資のサービスオフィスは色々なところに展開していますが、日本語でのサービスは一般的ではありません。日系の場合JETROSENTRO(マレーシア)があります。日本語でのサービスを受けることも可能なので、初めて進出される企業には外資のサービスオフィスよりとっつきやすいかもしれません。


続く

(2013年6月18日 海外進出時のリスクとその対応策に一部加筆しました)

海外進出のリスクを抑える33の戦略 (2)


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