2013年6月17日月曜日

「適応」戦略を実験しているテレビ番組発見!


69日日曜日、全然気合が入らず家でゴロゴロしていたらテレビ朝日で「日本のアレは世界で売れんのか?」という番組をやっていました。

中小企業が海外進出をする際にお奨めしているCAGE分析、ADDING価値分析のわかり易い実例だと思い投稿します。その他購買心理学の実例など、マーケティングのわかり易い教科書の様な内容でかつ、低リスクで海外進出を行うための示唆に富んでいると思うので、紹介します。

番組の概要はこちらです。
日本人になじみの深いモノは本場・海外でも売れるのか!?たらこスパをイタリアで、カレーパン&うどんをインドで…。日本の誇りを胸に世界へ挑む!その意外な結果とは!?

テーマは三つ


いずれも日本では、実績のある商品。海外での販売勝負に挑んだのは、三つのテーマでした。

1)ナポリタンvsたらこスパ

ナポリタンとたらこスパ、それぞれをパスタの発祥の地イタリアで昼食時間12時から15時の間三日間販売し、どちらの店がより販売数を上がられるかという勝負をする。ナポリタンは都内に数店舗展開している「ナポリタン専門店パンチョ」。かたやたらこスパは、「すぱじろう」がそれぞれ代表選手としてナポリと、ベネチアに乗り込んだ。結果は、たらこスパの勝ち。

2)カレーパンとカレーうどん


同様にカレーの本場インドにカレーパン(代表選手 ビストロ喜楽亭)とカレーうどん(代表選手 古奈屋)が1)と同じ方式で対決し、結果はカレーパンの勝ち。

3)洗濯物干しvsクールマットvs薄毛対策商品

こちらは、ベトナムの市場調査をしたうえでの三商品の対決。
1)、2)と対決方式が違うのは販売日数が一商品につき1日、それぞれの商品を売った場所は同じ場所、値段設定が3つの商品で若干違うこと。結果は、クールマットがダントツの一位。

番組を観てポイントは四つあるとおもいました。

① 価格はすべて現地類似商品群の価格帯に合わせていた事から、経済格差に関する差異は大きいと思われる。


ただし、市場価格感から大きく外れるものではない限り、多少の金額差は、問題にならないと思われます。なぜなら、テーマ3)の三つの商品の中では一位になったクールマットが一番高価でした。

② 「適応」は文化に根差したものには必ず必要である。


1)2)はそれぞれ食べ物がテーマになっていました。食べ物対決は三日間で行われるため、四チームそれぞれが顧客からのフィードバックを受けて次のような「適応」を行い、初日に比べて二日目、三日目と売り上げを伸ばしていました。順番にその内容を見てみます。

a) ナポリタン


「ナポリタン」という実は日本の食文化に根差したスパゲティー。この根本になっているのが、次の二つの要素です。具は、玉ねぎを多用し日本特有の小さいソーセージがメインであること。ソースはイタリアでは全くと言って人気が無いケチャップがメインであること。

店側としては、味の根本のソースを変更するとナポリタンではなく、普通のイタリア料理のパスタになってしまうという想いから、具を適応させていたました。

ソーセージをパンチェッタ(塩漬けした豚バラ肉。カルボナーラ等に使われるイタリアベーコン)に変更し、玉ねぎは可能な限り小さくしてその存在感を消すという対応を行っていました。

ちなみに、欧米では「玉ねぎ臭い」という表現は、不潔とかあか抜けないやつとかエチケットをわきまえない人のイメージがあり、相手を侮辱するときに使う表現です。

その他、二日目には同じ値段でのサイズの選択肢を増やし、三日目には目玉焼きとルッコラのトッピングを選べるようにするなど、売り方についての「適応」も試していました。

私見ですが、初日売り上げ数一桁という低調さを挽回するのに一番効果のあった「適応」は玉ねぎの存在感を消したことにあったのではないかと推測しています。

b) たらこスパ


このチームが行った適応は、辛い味の選択を増やすことのみでした。辛子明太子をわざわざ往復5時間かかるミラノまで仕入れに行っていたため、実質的には二日目を棒に振ってしまいました。

しかし、三日目はたらこスパと明太子スパ二種類を用意したことで、売り上げが伸び勝利につながっています。

c) カレーパン


このチームが実施した「適応」は4つです。その一番目は、気象条件が違う事から仕込時に発生した「カビ」への対処でした。牛、豚は宗教上の理由から食べない人が多いので、マトンを使って販売開始前日に仕込んだカレーのタネに3時間程度寝かしているうちにカビが発生してしまったのです。翌朝仕込し直し、出来たカレーのタネを急速冷凍させることで対応していました。

二番目は、ベジタリアン向けのカレーパンを用意したこと。インドでは、半数近くがベジタリアンだそうです。実際、販売初日に店に立ち寄った最初の数組はベジタリアンでした。この状況を見て、二日目からは数種類の野菜が入ったカレーパンを用意し、売上数を伸ばしていました。

三番目は、イタリアでは全く人気のなかったケチャップです。インドでは揚げ物に「ケチャップ」が定番だそうです。最初のお客さんがケチャップ無いの?と聞いたので用意したところ、二つ目をお買い上げになっていました。その後のお客さんも争うように、ケッチャップを付けて食べていたのが印象的です。

最後は、やはり辛さです。日本人の好みより数段辛くすることで、売上を伸ばしていました。

d)カレーうどん


このチームが行った適応は、麺の長さを短くすることと辛くすることの二つです。特に麺の長さを短くすることで、ぐっと売上増につながったようです。

これは、初日に購入してくれた顧客の完食が少なかったことから、カップめんなどを購入して分析した結果(現地のスタッフにはあらかじめ分かっていたのかもしれませんが)麺が短い事が判明したための対応です。

③ 購買心理はどの国でも同じ。


合計七つのチームがこの企画に参加したのですが、どのチームも現地の言葉で書かれた看板、ノボリを用意していました。つたない現地語で呼び込みをするのですが、共通していた現象としては、「人が集まりだすと、それまで遠巻きにしていた人たちが一気に集まってくる」ということです。

人は、あるものに興味を頂いた後にそれを手に入れる行動を起こす前に検討に入るといいます。自分にとって必要か?本当に大丈夫かを吟味するわけです。この番組で見られたのは、他人がそこにいることで検討の壁が一気に低くなった現象だと思われます。

もう一つは、効果を実感すると欲しいと思うようになると言う事です。テーマ3)はいずれも日用雑貨で事前の調査により、ある程度ニーズがあると思われた商品群でした。ご想像のとおり、見ることで効果が実感できるので洗濯物干しと薄毛対策商品はデモンストレーションが比較的簡単ですよね。

実際に一番効果訴求に苦労していたのが、クールマットでした。これを打破したのが、商品をはさみで切って見学していた人の腕に巻きつける行為でした。

この行為によって、集まってきた人に冷たいマットという効果が伝わり、そのことが一気に「目あたら良いモノへの関心」から「欲しい」に寄り爆発的な売り上げを生み出し、完売という状況を生み出したようです。当日限りという期間限定も爆発的な行動に拍車をかけた要因だと思われます。

④ 売るための仕掛けが出来ていた。


食べ物チームは、売り子さんと作る人がほぼ同じ人で、「適応」に必要な顧客の声が商品を創る側にダイレクトに伝わる仕掛けになっていた言えます。結果、その適応スピードを速くすることが出来、適応した結果のフィードバックも即座に得られることが出来たために更に良い方向への適応が強化されたと言うことだと思います。

日用雑貨の三チームも商品開発まではフィードバックされませんが、

Attention(顧客の注意を引く)
Interest(顧客に商品を訴求し関心を引く)
Desire(顧客に商品への欲求があり、それが満足をもたらすことを納得させる)
Action(顧客に行動を起こさせる)

を店頭で実行した結果が、成績の差はありましたが全くと言って
認知されていない商品を販売することができた成果につながっていると思います。

⑤ とはいっても商品力は大事である。


3つのテーマのそれぞれの勝者は、相対的にその市場にあった訴求価値を持っているものだと思われます。1)のパスタ対決では、イタリア人のパスタのイメージに近い、たらこスパにシンプルなパスタには辛みを求めるイタリア人の味覚に合った明太子スパを追加し選択肢を広げることで販売数をさらに伸ばし勝利しています。

2)のカレー対決でも、元々それに近い料理があるカレーパンが勝利しています。横道にそれますが、カレーうどんは麺を短くすることで食べやすさを実現し、売上を伸ばしていました。

余談ですが、番組では店先で食べている光景が映し出されており、他にテーブルを用意するなど店先の回転率を上げると、もう少し売り上げは伸びたのかもしれません。

3)の日常雑貨の勝者は、クールマットでした。寝具は一人一人が使う物であり、5人家族なら5枚必要というのが直感的に訴求できる商品だったと思われます。実際一人で15枚買った女性のインタビューでは、自分の家族用に5枚、親戚に10枚と言っていました。


実際の海外進出に取り込むには?


まず、海外進出するには、進出先でビジネスモデルを成り立たせる必要があり、その観点からいうと現地との経済格差をどう埋めるかがポイントになると思います。

次に、リスク分析の観点で最小限のコストでCAGE分析、ADDING価値分析を実地に行っている点が非常に示唆に富んでいました。

CAGE分析、ADDING価値分析といってもアカデミックに分析する事をお勧めしているわけは決してありません。これ等の分析に含まれている観点を検証することが重要だと思います。特に、日本でのやり方をそのまま持ち込むことを前提にそれぞれの企業にとって大きな投資をすることは避けるべきです。

この脈略の中で、今回特に示唆に富んでいると思うのは、いずれのチームも本当にミニマムな設備しかない屋台あるいは、居ぬきの店舗を短期間借りて「実験」を行っていることです。

多分これは、テレビ制作の人たちにとっては当たり前のことなのかもしれませんが、一般の企業からはなかなか出てこない発想だと思いました。

しかし、その結果上述した様に様々な検証結果を導き出すことが出来、それぞれの企業にとっての海外進出を成功させるためのポイントにつながると思います。

実際に進出先での店舗を借りるなど伝手が無いとなかなか難しいかもしれません。また、生産財などは「実験」が難しい側面はあると思います。この考え方を応用することで、CAGE分析・ADDING価値分析を事前にかつ有効に実施できるのではないかと思います。

最後に、この番組はゲームとしてそれぞれの対決を行っています。なので、短期間日本からのスタッフが出張することで対応していました。

「実験」フェーズでは、もちろん日本からのスタッフが対応する必要があります。実際のビジネスを立ち上げるにあたっては、上述の5つのポイントを仮説検証し続ける仕掛けを構築・運用する必要があると思います。

御社での海外進出にも、この考え方を活用してみてください。



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